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時の話題
府医ニュース
2017年4月26日 第2818号
平成25年3月の大阪市会において、機能統合に伴う大阪市立住吉市民病院の廃止を盛り込んだ「大阪市民病院事業の設置等に関する条例」の一部改正案が議決された。その際、「(仮称)大阪府市共同住吉母子医療センターの整備にあたっては、現行の住吉市民病院が担っている産科・小児科等の機能存続と南部医療圏の小児・周産期医療の充実のため、責任を持って民間病院の早期誘致を実施すること」と附帯決議が付された。つまり、機能統合後に廃止する住吉市民病院の用地を活用し、地元住民の不安解消に向けた取り組みとして、地域における小児・周産期医療を提供する民間病院を誘致することとした。その後、民間事業者のプロポーザル方式による選定会議が行われたが不調に終わり、事業者決定には至らなかった。
そのような中、民間病院の早期誘致の必要性から選定方法の見直しが行われ、27年9月大阪市戦略会議において、地元の民間病院が事業予定者と決定された。「府立病院機構大阪急性期・総合医療センター(以下、急性期・総合医療センター)」との役割分担の上、住吉市民病院の一般病床198床を1床削減の上、2病院に移管し、病院(医療機能)の再編を行う方針となった。なお、再編する病院が所在する大阪市二次医療圏は病床過剰地域であることから、病床移管については、医療法施行規則第30条の32第2項(複数の病院の再編統合に向けた医療計画制度の特例)に基づき、病院の再編計画を策定し、厚生労働大臣の同意を得て実施するとしている。再編計画では、197床のうち急性期・総合医療センターに一般病床97床を移管し、既存の医療資源(病床等)を活用して機能強化を図る。新棟「大阪府市共同住吉母子医療センター」(仮称)に125床を整備し、産科46床(MFICU6床)、新生児科21床(NICU9床、GCU12床)、小児科58床(HCU8床)。既存棟には57床整備(うち移管分37床)し、婦人科40床、救急後送病床17床を整備する。民間病院には地域でなお不足する小児・周産期医療等への対応として正常分娩を中心とした産科医療、一次医療を中心とした小児医療、一般医療(内科・外科等)を実施するために100床移管し、住吉市民病院用地に209床(一般164床・療養45床)の新病院を移転建て替えする。整備内容は産科14床、小児科10床、内科・外科・整形外科185床とするもので、30年度当初を開院目標としていた。
しかし28年5月、民間病院から用地北側の整備は日照の関係で困難として南側への計画変更の申し出があり、地域の医療空白を防ぐために住吉市民病院の既存病棟を活用し、民間病院の分院として30年4月から2年間運営することで調整された。その際、民間病院の財務負担軽減のために補助金、貸付金などの支援策が提示されたものの、市会の同意が得られず、誘致計画の見直しが求められたのは、メディアでの報道の通りである。
大阪府医師会ではこれまで住吉市民病院廃止後の再編計画について、住民への影響を最も憂慮しており、住吉市民病院が果してきた「社会的役割」「医療機能」を担保し、医療の空白を生じることなく、早急に対策を講じる必要があるとの考えから、大阪府医療審議会の場で今回の誘致計画を問題視してきた。現在、大阪市には新たな対応が求められているが、附帯決議が形骸化しつつあることを今一度認識すべきである。