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在宅医療推進事業 実績を報告

府医ニュース

2017年4月26日 第2818号

地域の実情把握し展開

 大阪府医師会は3月12日、平成28年度在宅医療推進事業実績報告会を府医会館で開催。同事業に参画した府内の38医師会の担当者が活動を報告した。
 司会は前川たかし理事が務め、開会にあたり中尾正俊副会長があいさつ。30年度までに全市町村が地域支援事業に取り組むが、医師会と行政が「両輪」となり積極的に関与してほしいと呼びかけた。

ICT事業の留意点

 続いて、久保田泰弘・浪速区医師会副会長が登壇。「浪速区医師会在宅医療コーディネータ(ICT事業と今後の注意点)」と題して講演した。はじめに、同区医師会の特徴的な事業である「ブルーカードプロジェクト」を紹介。在宅患者や外来の重病患者がかかりつけ医に発行してもらうカードで、急変時に連携病院との連絡が円滑に行われると利点を示した。21年11月よりスタートし、今年2月時点で延べ利用者は594件、現在の登録数は642件。緊急時の受け入れ拒否の解消や搬送所要時間の短縮にもつながっているとした。また、病院や施設からの新規在宅患者を受け入れる仕組みとして、「在宅医療ネットワーク」事業を実施しているほか、「Aケアカードシステム」についても提示した。久保田氏は同システムについて、地域包括ケアシステムにおける多職種連携のためのツールと説明。医師会主導でベンダーと共同開発したもので、患者の医療・歯科・薬剤・看護・介護情報が共有されているとした。あわせて、医療ICTネットワークの問題点などにも触れ、注意を喚起した。
 その後、4会場に分かれ、各医師会の事業担当者による報告会を実施。午前には府内医師会、午後からは市内医師会の発表が行われ、介護・高齢者福祉委員会の前防昭男氏、中祐次氏、松谷之義氏、真嶋敏光氏、辻正純氏、石見徹夫氏、守上賢策氏、長田栄一氏が各会場の座長を務めた。最後に同委員会の黒田研二委員長と榮木教子氏(大阪府訪問看護ステーション協会長)が、各医師会の活動についての講評を行った。

各医師会の取り組みを報告
第1会場(午前=前防昭男氏/以下、カッコ内は座長)

豊中市医師会
 在宅医療の関心を高めるため「同行マッチングプロジェクト」を実施。様々なニーズの確認ができた。

吹田市医師会
 アンケート調査を基にデーターベースを作成し「逆紹介用ソフト」を開発。今後も更なる拡充を図る。

箕面市医師会
 地域資源を把握し、「医療マップ」「認知症マップ」を作成したほか、「在宅医療情報シート」を作成中。

高槻市医師会
 在宅医療の情報を掲載した市民向け冊子を配布。また、看護師など3人がコーディネータとして活動。

茨木市医師会
 A会員を対象に在宅医療に関するアンケート調査を実施。今後は在宅医療マニュアルの作成を予定。

門真市医師会
 薬局・有料老人ホーム・サ高住の情報も掲載した医療・介護連携資源集の第9版が完成予定。(午後=辻正純氏)

北区医師会
 地域医療資源の把握や運用・連携に向けた情報交換会を実施。今後は在宅医療協力医の参入促進などを図る。

都島区医師会
 区内を3地域に分け、各地域で在宅医療グループを編成し、休日・夜間のバックアップ体制を構築した。

淀川区医師会
 在宅医療に取り組む医師で情報交換会を開催。在宅療養支援診療所数が2医療機関増加した。

東淀川区医師会
 これから在宅医療を始めようとする医師の手助けとなるよう、「在宅医療マニュアル」を作成した。

第2会場(午前=中祐次氏)

枚方市医師会
 「かかりつけ医マップ」を作成したほか、訪問看護ステーションとの連携強化に注力している。

交野市医師会
 会員へのアンケート結果から、「顔の見える関係づくり」に重点を置いて活動。各種会議などへ参画した。

布施医師会
 「東大阪三医師会在宅医療マップ&ハンドブック」を作成したほか、病診連携懇話会などを開催した。

枚岡医師会
 在宅医療にかかる診療報酬に特化した研修会、緩和ケアに関する事例検討会・フォーラムなどを開催した。

河内医師会
 医療材料供給システムの稼働を目指して準備中。市民向けシンポジウムも開催した。(午後=石見徹夫氏)

福島区医師会
 在宅医療推進委員会など既存の会議・会合にコーディネータが参加し、活動内容の紹介を進めている。

西区医師会
 リフィル式「在宅医療・介護情報冊子」を作成。そのほか、コーディネータによる電話相談を実施。

大正区医師会
 在宅医療推進情報交換会および合同研究会を開催。また、「コーディネータ新聞」を発行した。

西淀川区医師会
 患者の情報共有にあたり、病院・診療所ともに閲覧できる「に~よん医療ネット」の運用を継続している。

第3会場(午前=松谷之義氏)

富田林医師会
 在宅療養支援診療所10カ所を連携強化型在支診とし、診療情報を共有するなど、在宅医療推進に努めた。

河内長野市医師会
 「休日夜間病状急変時対応システム」を構築。そのほか、訪問看護ステーションとの連携を強化した。

松原市医師会
 地域医療連携室を設置したほか、地域医療連携シンポジウムや勉強会などを開催。市民向けの啓発も行った。

羽曳野市医師会
 医療・介護連携シートの利用促進や医療介護連携マップ・機能調査を改定。次年度は市民啓発に力を入れる。

大阪狭山市医師会
 事業の目的に鑑み、医療を中心とした連携事業を展開。フィールドワークを中心とした行動に注力した。(午後=守上賢策氏)

旭区医師会
 多職種連携会議を含めて定期的に研修を実施。「在宅医療推進コーディネータニュース」を発刊した。

天王寺区医師会
 強力な急性期医療提供体制を背景に、区内の特色を勘案した在宅医療提供体制構築を推進した。

中央区東・南医師会
 2医師会共同で事業を展開。在宅医療資源の把握に努めた。地域ケア研究集会などの研修会も実施した。

浪速区医師会
 ICTを基盤としたネットワークを展開。地域包括ケアシステムにおける多職種連携ツールを開発した。

第4会場(午前=真嶋敏光氏)

堺市医師会
 訪問診療導入(同行訪問)研修を実施したほか、医師会ホームページ「在宅医療情報システム」を更新した。

泉大津市医師会
 アンケートでコーディネータ活動の重要性を確認。新規参入する医師が増えるよう、研修等を企画中である。

泉佐野泉南医師会
 在宅医療を行う医療機関が少ない地区で、主治医・副主治医制のチームを作るなどサポート体制を構築した。

和泉市医師会
 コーディネータ5名を採用し、サポート体制を強化。また、「看取りの代診システム」の協議を開始した。

高石市医師会
 アンケートを通じ、課題を抽出。積極的に在宅医療に取り組む医療機関を模範として対策を検討した。(午後=長田栄一氏)

生野区医師会
 往診が難しい診療所のサポートや、主治医不在時の連携など、「在宅医療バックアップ」を検討している。

城東区医師会
 行政と連携し在宅医療を推進している。一方で、非会員施設、在宅専門診療所の課題があり、対策を協議中。

鶴見区医師会
 勉強会、講演会を通じ、コーディネータと医師の連携を強化し、在宅医療への参入を促している。

住之江区医師会
 後方支援として、訪問診療患者のレスパイト入院制度を確立。会報に「在宅コーナー」の連載を開始した。