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府医ニュース
2017年4月19日 第2817号
第139回日本医師会臨時代議員会(定数363人/久野梧郎議長〈愛媛県〉)が3月26日、日医会館で開かれ、平成29年度日医事業計画・収支予算が報告されたほか、28年度日医会費減免申請が審議された。また、ブロック代表質問8題・個人質問12題により医療情勢などに関する見解が問われ、日医執行部が答弁した。
久野議長の開会宣言に続き、横倉義武・日医会長が登壇。まず、会務運営への理解と協力に謝辞が述べられた。次いで、昨今の医療情勢を踏まえながら、今後の日医の運営方針を表明。「誕生から死に至る過程に寄り添い、人生の手伝いをする」という医療の本来的な役割を共通認識とし、人生の様々な段階における医療の在り方を議論することで、「医療政策・医療制度が見える」と前置き。我が国の医療を支える重要な要素に「かかりつけ医」を挙げ、その機能の維持・向上に向けて尽力するとした。一方で、「総合診療専門医」との違いに言及。かかりつけ医は「診療における役割と社会的役割を持って、地域を支える存在」とし、総合診療専門医は「医師の自己研鑽の一手段」であり、「学術的な評価」との見解を示した。更に、かかりつけ医を普及・定着させるためには、「国民の信頼を得る必要がある」と強調。患者の利益を尊重し、専門職としての能力と倫理の水準を高めるよう、自己規律を求めた。最後に、国民皆保険制度の下、かかりつけ医が患者や家族に寄り添い、その職責を十分に果たすことが、高齢社会に安心をもたらす「日本型モデルの柱」になると力説。世界への発信も視野に、グローバルヘルスにも積極的にかかわりながら、医師会員の信託に応えたいと述べ、一層の理解・協力を要請した。
引き続き、29年度事業計画を中川俊男・日医副会長、同予算について今村聡・同副会長が報告。あわせて、日医財務委員会の橋本省委員長(宮城県)より、「審議過程で医師の偏在対策や事業計画『重点課題』などについて質問し、理事者より回答を得て同委員会で承認した」との経緯が述べられた。
議事では、28年度日医会費減免申請を、今村・日医副会長が提案。挙手多数で可決承認された。なお、減免申請は1万4806人で総額4億6377万1千円。
ブロック代表質問では、8題の質疑応答が展開された。近畿ブロックからは、寺下浩彰代議員(和歌山県)が、「新専門医制度と日医の組織強化」について質問した。午後からは個人質問が行われ、12題の質疑応答を実施。近畿ブロックからは、大澤英一代議員(奈良県)が医師の偏在対策に関する日医の考えを質問。また、加納康至代議員(大阪府)が「家庭医構想」を引用し、総合診療専門医について日医の見解をただした。
午前のブロック代表質問では、松原謙二・日医副会長が2題の質問に答えた。
藤原秀俊代議員(北海道)は、厚生労働省から保険者への「中間サーバー」設置要請に伴う国民の負担を懸念し、日医の見解を確認した。これに対し松原・日医副会長は、財源の捻出を患者負担に求める傾向があるが、「国として財源措置を講じるよう要求していく」との姿勢を明らかにした。また、中間サーバー設置に関しては、「医療等IDの実現に向けた重要な仕組みでもあり、費用とのバランスを考慮して意見を提示する」と述べた。
医療広告の在り方や、ホームページ・広告の監視体制をただした堂前洋一郎代議員(関東甲信越/新潟県)への回答では、「自由度を守りつつ、氾濫する情報から患者の生命や健康を守るため、職業倫理指針の普及啓発に努める」と説明。監視体制についても、適切に対処できる仕組みが必要とし、関係検討会に参画した上で、規制の枠組み作りや監視体制強化を支える方針を示した。
かつて厚生省(当時)が「家庭医構想」を提唱した際、日医が▽診療報酬の人頭割り導入▽フリーアクセス制限――に強く反対し、頓挫した経緯があると前置き。新たな専門医の仕組みにおける「総合診療専門医」を糸口とし、医療費抑制の手段として再び「家庭医構想」の実現を企図していると警戒感を示した。更に、診療報酬上の評価や制度化を憂慮。19番目の基本領域に加えることに警鐘を鳴らした。
「専門医資格は医師の生涯研修の一手段」であり、「学術的な評価」と言及した。また、総合診療専門医は他の基本領域と異なるとの認識を示した上で、「サブスペシャルティ」としての位置付けが合理的とする意見の一方で、その活躍を期待する声もあり、調整が困難な状況にあるとの現状を説明。そうした状況も踏まえ、最終的な具体策の提示には更なる検討が必要とした。総合診療専門医に対しては、法律に基づく制度化や経済的インセンティブの付与がなされないよう努めると述べ、理解を求めた。
新たな専門医の仕組みは、「専門医の質の向上と地域医療提供体制の改善」が前提とした上で、「総合診療専門医」に対する見解を確認。医師の専門志向の制限につながることを懸念し、偏在対策とは別建ての論議が必要と訴えた。更に、基本領域に総合診療専門医が位置付けられたことに触れ、「かかりつけ医が研鑽することで十分役割を果たせる」と強調。改めて総合診療専門医の必要性を尋ねるとともに、日医の組織強化に向けた取り組みを問うた。
はじめに、日本専門医機構が策定した『専門医制度新整備指針』を引用し、「新たな専門医の仕組みは、医師の偏在を助長することがないよう柔軟な対応をする趣旨と理解している」と説明。適切な運営に向けて尽力するとの考えを示した。
医師の地域偏在対策に関しては、厚生労働省「医師需給分科会」で具体的な議論がされていると明言。しかし、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」が設置されて以降、同分科会が開催されていない現状を鑑み、早期の再開を求めつつ、日医内部での議論を展開すると述べた。また、専門医に関しては、「医師の自律性に基づき実践されるもので、国の介入による法的規制を受けるものではない」と指摘。適切な制度運営に努めると力を込めた。
日医の組織強化では、都道府県・郡市区等医師会と協力し、一定の成果は得られたとしつつも、更なる対応を図るとした。
まず、「医師の偏在対策について、日医の方針が定まっていない」との思いから、今回の質問に至ったと前置き。国の医師偏在対策に関して、「都道府県の権限を一層強化し、明確化している」と危惧を表明した。特に、医師不足地での勤務を管理者要件とすることには、「強く否定しなければ、法的に医師偏在対策として組み込まれる恐れがある」と力説。更に、今日の医師偏在の問題は、国の政策の失敗と断じ、日医が対策をリードするよう求めた。
質疑を受け、「国は開業制限や外来受診制限など、より厳しい規制を強制的に行ったり、医師以外の職種へのタスクシフティングを導入する可能性がある」と指摘。医学部定員に関しても、適正な水準への修正が延期される恐れがあると示唆した。日医自らが具体策を提言する必要性を認識しており、「医師の団体の在り方検討委員会」で議論を深めているとした。
また、医師偏在対策については長期の展望に立ち、「一貫性を持って行う必要がある」と強調。そのためにも地域における医師の需給実態を客観的に把握し、住民が求める医療提供体制を勘案することが大切であるとした。その上で、住民・行政・医療関係者が納得でき、「国全体として整合性がとられなければならない」との考えを示した。
日医としては、医師の自発的な意思を尊重し、強制的な仕組みを排除しつつ、偏在解消策を探っていくと述べた。
平成29年3月26日の第139回日本医師会臨時代議員会は、雨の日医会館に代議員が集合し、9時から議事運営委員会が開催された。9時15分から3階控え室で近畿ブロックの打ち合わせが開始されたが、5年前の日医役員選挙とは異なり、和やかな雰囲気であった。近畿医師会連合委員長の空地顕一・兵庫県医師会長のあいさつがあり、足立光平・議事運営委員より委員会の報告があった。
9時30分定刻に開会し、代議員の出席者数等の報告後、横倉義武会長からあいさつがあった。次期世界医師会長就任の報告に次いで、効率的かつ質の高い医療提供体制と、地域包括ケアシステム構築におけるかかりつけ医の役割等について述べられた。かかりつけ医機能の維持・向上に向けて都道府県医師会の果たす役割についても要望された。次いで、29年度日医事業計画を中川俊男副会長が報告し、予算報告を今村聡副会長が行った。
議事は第1号議案として「28年度日医会費減免申請」が上程、可決されたが、東日本大震災による減免会員もおられ、胸が痛んだ。
10時20分過ぎより代表質問が開始され、1.坂本不出夫代議員(熊本県)より「災害時におけるJMATの位置付け並びに今後の強化策について」の質問があり、中川副会長が答弁した。2.藤原秀俊代議員(北海道)より「中間サーバー等に係る必要経費の保険者負担について」の質問があり、松原謙二副会長が答弁した。医療機関負担増を懸念する追加質問が出され、対応策の答弁がなされたが、注視していく必要がある。3.矢嶋茂裕代議員(岐阜県)より「日医の乳幼児および学童の諸問題に対する取り組みについて」の質問があり、横倉会長が答弁した。将来を担う小児の死亡・虐待に対する日医の取り組みは重要であり、武本優次予備代議員(大阪府)が追加発言で情報開示等に関する要望を述べ、横倉会長も対応したいと答弁した。4.高橋克子代議員(宮城県)より「日医女性医師支援事業および支援委員会の今後について」の質問があり、今村副会長が答弁した。5.寺下浩彰代議員(和歌山県)より「新専門医制度と日医の組織強化について」の質問があり、横倉会長が答弁した。全国の届出医師数の3分の2は郡市区等医師会員であるが、日医会員は2分の1余りであるので、日医のみならず、都道府県医師会と郡市区等医師会の更なる努力が必要である。また、追加発言でも総合診療専門医を19番目の専門医とすることに異論が出された。6.堂前洋一郎代議員(新潟県)より「情報化時代の医療広告について」の質問があり、松原副会長が答弁した。7.河村康明代議員(山口県)より「医療費削減のためのICT診療(≒遠隔診療)について」の質問があり、中川副会長が答弁した。8.蓮沼剛代議員(東京都)より「我が国における今後のタバコ対策に関して」の質問があり、今村副会長が答弁した。多くの活発な追加発言があったが、医師会員の禁煙対策も必要であると思う。
12時25分からの昼食休憩をはさんで、13時10分より個人質問が再開された。加納康至代議員(大阪府)より「『家庭医構想』の復活につながる『総合診療専門医』を憂慮する」との質問があり、羽鳥裕常任理事が答弁した。「総合診療専門医」を19番目の基本診療領域に加えるのではなく、内科、外科、小児科等の基本診療領域の専門医資格を有する医師が目指す「サブスペシャルティ」として位置付けるよう制度設計の見直しを図るとの意見が実現することを願いたい。その他、11件の個人質問があり、それぞれ適切な答弁と追加発言が行われた。その中で松山正春代議員(岡山県)からの「集団的個別指導・個別指導等について」の質問において、集団的個別指導から高点数というだけで個別指導に移行していること等に関して議論があった。改めて府医役員の努力に敬意を表するとともに、更に執行部を支援する必要性を痛感した。
いずれも重要な案件であり、一般会員も代議員会の質問・答弁を含む議論を傍聴することが必要であると考えるので、代議員会を会員に中継することを検討されてはいかがであろうか。(中)