
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
本日休診
府医ニュース
2017年4月5日 第2816号
祖母と二人暮らしの小学生がいる。ここまでは私の知る事実だが、以下は仮の話として聞いてほしい。少女の両親は借金が原因で消息不明。祖母は要介護3のがん患者。病院からの紹介であなたに祖母の在宅医療依頼があったとする。初めての訪問日、少女が祖母の排泄介助まで行っている事実を知った時どうするだろうか……。もし、あなたが小児科医だったとする。発熱で来院した少女が自宅で祖母の世話までしていることを知ったら……。また、病院勤務医として患者の疾患以外の生活の問題に出合った時、分業的思考で「ここからは医療と無関係」と割り切ることができるだろうか。
確かに、医療者が患者家族に寄り添い過ぎて本末転倒となる恐れはある。私も医療者としての限界を知り、完全解決思考に陥らないよう注意している。ただ、患者の病状把握の過程で、機能不全家族や、制度・行政の縦割りなどの外的要因がメインとなっていることはないだろうか。そのように、患者の病(小医)だけでなく、患者の家族や社会的要因(中医)さらには、そのようなことに陥った社会的構造欠陥(大医)を考えることが、全人的医療と呼ぶものだと思う。それが昨今言われている地域包括ケアだ。
地域包括ケアと地域包括ケアシステムは違う。地域包括ケアシステムは国・行政が進めるプロジェクト。上記であげた地域包括ケア、つまり「中医」にあたる部分を円滑にするよう、医師会がケアシステム構築の際行政に求めていくことが大事である。システムはビジネスとして合理化・円滑化するものであってはならない。更に「大医」として医師会を通じて社会構造問題に向き合う、これが以前から求められていれる医師の社会貢献である。包括ケア(≠システム)は高齢者医療だけが対象ではない。すべての医師が当事者であることを自覚せねばならない。(真)