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医師・医療関係者のみなさまへ
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時事
府医ニュース
2017年4月5日 第2816号
来年4月の医療保険と介護保険の同時改定に向けて、中央社会保険医療協議会(中医協)総会が開催されているが、在宅医療の推進には改定が必要である。
医師が在宅医療に取り組む場合の第一の障壁は、1人の医師が24時間365日、様々な疾病・状態に対応しなければならない肉体的・精神的負担である。対策として地域医師会ではチーム医療体制構築の努力を行い、チーム医療を進めやすい方法として専門の異なる複数の医師が1人の患者を診ることにより、診療の質の向上も含めた在宅医のストレスの軽減を図る取り組みを検討している。このチーム医療体制は、主治医の不在時にも看取りを含めてチームの一員である顔見知りの医師が対応すること等によるメリットに加え、患者が求める入院医療と遜色のない医療を入院時と同様に複数の専門医が提供することで入院医療の受け皿としての在宅医療を提供できるメリットがあり、患者の求める在宅医療への移行を推進することになる。
しかしながら、このチーム医療体制構築の大きな障壁が現在の診療報酬制度である。すなわち、「在宅患者訪問診療料は、1人の患者に対して1つの保険医療機関の保険医の指導管理の下に継続的に行われる訪問診療について、1日につき1回に限り算定する」とされており、1人の患者に複数の医療機関の保険医が在宅患者訪問診療料を算定することを認めていない。一方「往診料は、患家の求めに応じて患家に赴き診療を行った場合に算定できるものであり、定期的ないし計画的に患家または他の保険医療機関に赴いて診療を行った場合には算定できない」とされている。このため、現状ではチーム医療体制を構築できないどころか、在宅での留置カテーテル設置や胃瘻カテーテル交換、褥瘡処置を主治医が専門医に依頼する場合の障壁になっている。
しかし、複数医師が在籍するいわゆる「在宅専門医療機関」では週3回まで認められている「在宅患者訪問診療料」の算定を利用して複数医師が訪問しており、不公平であることが以前より指摘されている。
「在宅専門医療機関」については、訪問診療に長時間を費やせることもあり、重症患者の病院等からの紹介を多数受け入れているが、その副作用として一般診療所が診るがんを含めた重症患者が減少している実態がみられる。これにより「強化型在宅療養支援診療所」の施設基準等に求められる「緊急の往診の実績」および「在宅における看取りの実績」を達成できない可能性を懸念する医療機関がある。連携型の「強化型在宅療養支援診療所」のチームでは、1医療機関が実績を達成できなければすべての医療機関が「強化型」を返上しなければならなくなる可能性もある。第二の障壁となりつつあり、再検討が必要である。
そして、もうひとつの障壁は複雑で分かりにくい診療報酬制度である。「在宅専門医療機関」においては在宅医療の保険請求に精通した職員もおり、上手に請求しているが、小規模の外来診療を主としている医療機関では複雑な医科点数表を十分マスターすることが困難であり、保険請求に苦慮している。簡単で分かりやすい診療報酬体系に改定することが求められる。
今回の診療報酬改定は地域包括ケアシステム構築を推進するためにも重要である。良質な在宅医療を推進することができる改定となることを望んでやまない。(中)