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時事

「配食」の重要性

府医ニュース

2017年3月15日 第2814号

栄養管理の質向上のため、事業者向けGL公表へ

 3月2日、厚生労働省「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理の在り方検討会」報告書が公表された。この検討会は、昨年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」において「配食を利用する高齢者等が適切な栄養管理を行えるよう、事業者向けのガイドライン(GL)を作成し、平成29年度からそれに即した配食の普及を図る」と記されたことを踏まえ、7月に発足していた。
 報告書では、在宅医療・介護推進の流れの中で、地域高齢者等が医療・介護関連施設以外でも健康・栄養状態を適切に保つことができ、かつ口から食べる楽しみも十分得られる食環境整備は極めて重要であり、配食の果たす役割は実に大きく、ニーズは今後ますます高まるため、栄養管理の在り方について整理が必要としている。
 これまでの調査から、▽地域高齢者では年齢階級が高いほど低栄養傾向になりやすい、▽低栄養は死亡の、血清Alb濃度や血中Hb濃度の低値は自立喪失のリスクとなる、▽よく噛めない群はよく噛める群に比べて栄養素や食品群の摂取量が低く、たんぱく質、脂質、鉄などの栄養素は10%以上低い――などを挙げた。同時に、食欲が減少しがちな地域高齢者に対し、何の工夫もなく一律に薄味にした食事を提供すると、食欲が更に減少し、食品摂取の多様性も失われ、低栄養につながる懸念も表している。
 配食事業の市場規模は、21年度から26年度の6年間で、約1.8 倍拡大しているという。利用状況として、▽利用者の年齢は80歳以上が大半を占め、独居または夫婦のみの世帯での利用が約9割、▽利用頻度は週4回までで約7割を占める、▽3食中、夕食が最も多い、▽約半数が1回の食事で全量を摂取しているが、全量摂取できない者も多い――などを示した。そして、現在の配食の課題として、栄養価計算の不十分さや、摂食嚥下機能の低下に対応した食形態の種類の少なさ、利用者へのアセスメントの不十分さなどを指摘している。
 GL案では、1.献立作成の体制(十分な技能を持つ者が担当。継続的な提供食数が概ね1回100食以上または1日250食以上で、栄養素等調整食や物性等調整食を扱う場合、管理栄養士または栄養士が担当)、2.手順、3.栄養価のばらつきの管理、4.メニューサイクルの設定(飽きのこないサイクル、季節感)、5.調理、6.衛生管理――について述べている。更に、配食注文時にはアセスメントを行い、利用意向者のうち、低栄養が疑われる者や在宅療養者等への対応については管理栄養士が担当し、必要に応じ、かかりつけ医(かかりつけ歯科医)等との連携を求めている。そして、配食継続時にはフォローアップを行うこととし、アセスメントおよび継続時のフォローアップにおける確認項目の例をも示している。
 目論見通りに事が運べば、多くの配食事業者が、地域のケアスタッフの有力な一員となる。(学)