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医師・医療関係者のみなさまへ

時の話題

これからの精神保健医療福祉のあり方1.

府医ニュース

2017年3月15日 第2814号

――日本の精神科医療の現状から

 これまで、我が国の精神科医療の特徴として、先進諸外国に比べて病床数が多く、在院日数が長いことが指摘されてきた。国により制度、施設形態のカテゴリーなどが異なるため、一概には比較できないが、入院医療中心とされてきた日本の精神科医療は、とかく非難の対象となっていた。
 精神疾患は、病識の獲得が困難な例が存在することなどの疾病特性がある。また、▽入院以外の施設整備の遅れから施設の代用として病床を利用▽精神疾患に対する誤解・理解不足などによる地域での受け入れ困難▽ある一定の重度慢性化例が存在する▽ストレス、怠薬などを契機に急激に再発・再燃することがある不安を理由に、院内完解状態からの退院困難例がある――などが、入院長期化の原因と考えられる。また、これまで有効な治療法が限定的でエビデンスに乏しいことなどを背景に、医療費や人員配置などが身体科に比べて低く抑えられ、「障害」という言葉が表すように、医療よりも福祉に重きが置かれてきたように思われる。更に政策医療を含め、本来、行政が担うべき役割を民間医療機関が担ってきた歴史がある。
 平成16年9月に策定された「精神保健医療福祉の改革ビジョン」において、「入院医療中心から地域生活中心」との理念が、我が国の精神科医療の在るべき姿として明確にされた。加えて、産業保健領域を中心としたうつ病などのメンタルヘルス対策強化の認識が共有され、精神症状を伴う認知症高齢者の増加などから、認知症を含めて精神疾患に関し、改めて「国として対策する重要性」が確認され、5疾病5事業の1疾病に位置付けられた。
 その後も積極的な精神疾患に対する啓発や精神保健福祉に関する法改正、診療報酬改定による誘導など様々な施策が推進され、都市部を中心とした精神科クリニックの増加、有効な薬物の開発などから精神科を取り巻く状況は変化していった。特に精神科医療に携わる医療・福祉関係者のたゆみない努力により、退院促進、アウトリーチが進み、入院受療率は低下傾向であり、確実に地域に根差した精神科医療が実践されている。
 その一方で、ここ数年は、▽精神保健指定医資格取得についての不正問題▽相模原市の障害者支援施設での事件を契機とした指定医制度▽措置入院制度の在り方――など、精神科を取り巻く様々な問題点がクローズアップされた。
 現在、精神疾患についても、地域包括ケアを目指しての次期医療計画や、精神保健福祉法改正に向けての議論が行われている。厚生労働省では、昨年1月から「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」が開催され、8回の検討会を経て2月8日、報告書が発表された。
(次号に続く)