
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
時事
府医ニュース
2017年2月15日 第2811号
1月30日、厚生労働省「第2回抗微生物薬適正使用(AMS:Antimicrobial Stewardship)等に関する作業部会」が開催され、適正使用の手引きのたたき台が提示された。この部会は、2015年5月の世界保健総会での「薬剤耐性対策に関するグローバルアクションプラン」採択を受け、「国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議」が翌年4月に策定した「薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)対策アクションプラン2016―2020」に基づき設置された「厚生科学審議会感染症部会薬剤耐性(AMR)に関する小委員会」において、適正使用分野の審議のために設けられていた。日本のプランでは"2020年の黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率を20%以下に低下させる""2020年の人口千人あたりの1日抗菌薬使用量を2013年の水準の3分の2に減少させる"など、ヒトで8つ、動物に関し3つの成果指標が設定されている。
たたき台では、無策であれば2050年には全世界で年間1千万人が薬剤耐性菌により死亡するとの推定、諸外国との比較で、経口第3世代セファロスポリン薬、フルオロキノロン系薬、マクロライド系薬の使用頻度が高いことを踏まえ、対象を主に外来診療を行う医療従事者に設定し、不必要な抗菌薬処方が多いと推測される「急性気道感染症」と「急性下痢症」に焦点を当てている。
前者では、▽(普通)感冒、▽軽症の急性鼻副鼻腔炎、▽迅速または培養検査でA群β溶血性連鎖球菌の検出されない急性咽頭炎・扁桃炎、▽百日咳を除く急性気管支炎に対し、抗菌薬投与は行わないことを推奨し、ご丁寧に、患者・家族への説明例を挙げている。急性気管支炎では「咳が強いタイプの風邪で、気管支炎を起こしているようです。熱はないですし、今のところ肺炎を疑うような症状もありません。実は、気管支炎には抗生物質はあまり効果がありません。抗生物質には吐き気や下痢、アレルギーなどの副作用が起こることもあり、今の状態だと使わない方が良いと思います。咳を和らげるような薬をお出ししておきます。最近は、コーヒーにハチミツを入れて飲むと咳止めと同じくらい咳を和らげる効果があることが分かってきていますので、試してみるといいかもしれません(以下、略)」という具合である。
後者では、ウイルス性、および、細菌性でも重症例と海外渡航からの帰国者の下痢を除き、抗菌薬投与は推奨しないとなっている。原因微生物が判明した場合、健常者での軽症から中等症のサルモネラ腸炎、重症例以外のカンピロバクター腸炎では抗菌薬治療は推奨せず、腸管出血性大腸菌腸炎では、抗菌薬の推奨は統一されていないとしている。説明例は「症状からはウイルス性の腸炎の可能性が高いと思います。抗生物質はほとんど効果がなく、腸の中のいわゆる善玉菌も殺してしまい、かえって下痢を長引かせる可能性もありますので、対症療法が中心になります(以下、略)」となっている。
会議では、目立った異論はなかったと報じられており、今後は、小児も含めた内容を検討する予定とのことである。いわゆるイタチごっこが続かなく(続けられなく)なったことを実感せざるを得ない。(学)