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府医ニュース
2017年2月15日 第2811号
大阪府医師会は1月27日午後、郡市区等医師会長協議会を府医会館で開催した。茂松茂人会長のあいさつに続いて、府医の連絡事項を提示。このうち、宮川松剛理事が「大阪市立住吉市民病院の廃止に伴う病院(医療機能)再編計画」「大阪府『監察医制度』」に関し、これまでの経過を報告するとともに、府医の見解を述べた。
大阪市立住吉市民病院の廃止に伴う病院(医療機能)再編計画では、平成27年に大阪市が民間病院の誘致を決定。これを巡り、同年の大阪市南部保健医療協議会や大阪府医療審議会の席上、民間病院に産科・小児科医療の実績がないこと、医師確保・医療の継続性の問題などから、再編計画に反対する採決がなされた。しかし、大阪府知事は再編計画を推進する必要があると判断。大阪府医療審議会の反対意見とあわせて国に「再編計画」を提出し、厚生労働大臣の同意が得られた経緯がある。同市民病院は30年3月まで診療を継続し、同年4月より民間病院が同市民病院の敷地内に移転・運営する予定であったが、協議が難航している。
1月20日開催の大阪市南部保健医療協議会で、大阪市より再編計画の経過が報告された。昨年5月、日影規制の問題で建設場所(北側)の変更を迫られ、大阪市は、民間病院側に同市民病院の既存施設を利用し、30年4月からの運営開始を提案。交渉の結果、▽既存施設を活用し、民間病院が30年4月から2年間、産科・小児科を含む100床を暫定運営▽同市民病院南側に32年4月開院で新病院を建設▽2年間の収支差の支援策を大阪市が検討――の方向で調整したいとの見解を示した。この説明に委員からは、「医師確保の懸念が払拭されていない」など、改めて民間病院への誘致を不安視する意見が寄せられた。協議会では、「現在の再編計画は賛成しかねる」との視点で、「30年4月時点で医師等が確保できなかった場合、民間病院に撤退を求める」旨の決議を出席委員全員(大阪市側委員を除く)の一致で採択した。
宮川理事は、民間病院側が提示している産科・小児科各3名の常勤医師数について、現状の医療機能を継承するには十分とは言えないとまとめた。その上で、地域住民に必要な医療が提供できる体制に向け、引き続き尽力していくとした。
死因究明等の推進に関する法律(24年)に基づき、26年6月、「死因究明等推進計画」が閣議決定された。この中で、都道府県に対し、死因究明等に関する施策の検討を目的とする会議の設置が盛り込まれた。大阪府は「死因調査等あり方検討会」において、公衆衛生向上のために資する死因調査の在り方の検討を開始。公衆衛生・法医学・医療・司法・警察の各分野により委員が構成され、府医からは宮川理事が参画している。
当初、大阪府からは議論の方向性が示されておらず、6月・7月の会合では、死因調査の現状や監察医制度の概要、震災時の体制や社会の変容への対応などの意見を交換。監察医制度に関しても、重要性が確認されるとともに、制度充実に向けた前向きな議論が展開されていた。しかし、10月中旬、突如として監察医制度の廃止に関する報道が相次いだ。大阪府は「廃止とは言っていない」と報道を否定したものの、以降の検討会の議論は紛糾している。1月26日に開催された会合では、大阪府健康医療部の認識と課題等が示されたほか、会議の最後に突然次年度の検案研修会の開催が提案された。
宮川理事は、検討会の議事録の開示が十分ではないことに加え、これまでの協議内容を反故にし、一方的に見解を述べ拙速に進めようとする大阪府の姿勢に疑義を呈した。また、検案研修会については、目的や対象が明らかになっていないと指摘。検討会は今年度内に再度開催される見通しであるが、委員や関係者の意見が反映される会合となることを求めている。
死因が判明しない際、解剖を行うことでその死因を明らかにし、公衆衛生の向上を図ることを目的に昭和22年より全国7都市で実施。現在は、東京23区・大阪市・神戸市で運用されている。
大阪市では、大阪府監察医事務所において市内の異状死体の検案・解剖、死因究明に向けた業務を実施。年間死亡者数2万7千人のうち、4千例超が検案され、約千例の解剖を経て死体検案書の作成、交付が行われる。大阪市消防局の資料によると、救急不搬送のうち約3千件が死亡によるものであり、事件性が薄くかかりつけ医がいないケースなどは監察医による検案等がなされる。