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十四大都市医師会連絡協議会

府医ニュース

2016年11月16日 第2802号

 第55回十四大都市医師会連絡協議会が、10月22日・23日の両日、名古屋市医師会(杉田洋一会長)の主務により同市内のホテルで開催された。今年度は「地域包括ケアの実践」「災害時を想定した各医師会の体制整備」「医師会活動における広報の役割・取り組み」をテーマに、3分科会が実施されたほか、2日目には横倉義武・日本医師会長による特別講演などが行われた。

大都市医師会の「在り方」協議

 開会にあたり、杉田・名古屋市医師会長があいさつ。消費税率の引き上げ再延期や高齢化の進展など、社会保障の先行きが不透明さを増しているが、地域医療の現場を預かる医師会として、「住民目線での医療制度の充実が望まれる」と述べた。また、かかりつけ医を中心とした医療提供体制および地域包括ケアシステムを各地域の実情に即した形で構築し、国民生活の安全・安心に寄与していくことが地域医師会の果たすべき役割とし、分科会での活発な討議に期待を寄せた。あわせて、台湾で開催されていた世界医師会総会において、横倉・日医会長が次期世界医師会長に選出されたと報告。会場から大きな拍手が送られた。
 分科会の終了後には懇親会が開催された。来賓として、横倉・日医会長(市川朝洋・日医常任理事が代読)、柵木充明・愛知県医師会長、大村秀章・愛知県知事、河村たかし・名古屋市長、地元選出の藤川政人・参議院議員があいさつ。鏡割りの後、参議院厚生労働委員長に就任した羽生田俊議員が乾杯の発声を行い、懇親会がスタートした。また、自見はなこ・参議院議員も登壇し、今後に向けて抱負を述べた。
 舞台では、愛知県医師会交響楽団の演奏、観光PR部隊「名古屋おもてなし武将隊」による工夫を凝らしたアトラクションが繰り広げられ、出席者は和やかな雰囲気の下、懇親を深めた。
 協議会2日目には2題の特別講演が行われた。世界医師会総会を終えた横倉・日医会長が駆け付け、「日本医師会の医療政策」と題して講演した。「社会保障と経済成長」については、「医療は消費」との意見に、社会保障が持つ経済効果を列挙。老後に不安を抱く国民に安心を示すことが、経済成長を取り戻すための出発点でもあるとした。次いで、平成29年度予算編成の動きと日医の見解・対応を報告した。財務省が社会保障関係の伸びを5千億円に抑制することを求める一方、高齢化等に伴う6400億円の自然増が見込まれていると指摘。29年度は年金・医療・介護・生活保護のいずれも大きな制度改正がなく、その中で適切な対応が求められるとした。最後に、持続可能な社会保障制度に向け、財政主導ではなく、医療側からも過不足ない医療を提供できるよう要望していくと強調。健康寿命の延伸への取り組み、かかりつけ医を中心にした切れ目ない医療・介護の提供などについて説明した。終末期医療にも触れ、「財政の観点ではなく、人間の尊厳によってなされるべき」とし、リビングウィルの普及・啓発にも力を入れたいと結んだ。

特別講演 ものづくりの理念語る

 続いて、布垣直昭氏(トヨタ博物館館長)が、「自動車を通じた技術・文化の発展史とトヨタ博物館」と題して講演。自動車の歴史や変遷を紹介するとともに、過当競争の中でのものづくりの大切さ、地域とのかかわりを説いた。更に、「人と車の豊かな未来のための博物館」との理念から、「文化の交差点」としての博物館の在り方に言及。自動車文化の育成に向けた今後の展望を語った。

十四大都市医師会連絡協議会

 昭和39年に名古屋市医師会の主務で初開催。政令指定都市にある医師会が毎年一堂に会し、医療を取り巻く諸課題について協議している。次回は東京都医師会が担当し、平成29年10月21日・22日に都内で開催予定。

第1分科会 地域包括ケアの実践

 「切れ目ない在宅医療と在宅介護の提供体制の構築推進」では、主治医が訪問診療できない場合の補完体制、後方支援病院との連絡・調整支援体制、在宅医を増やす取り組みなどが報告された。府医からは、郡市区医師会と各市町村の活動状況、在宅医療推進コーディネータ事業などを紹介。在宅医療にかかりつけ医が参画し、コンダクターとしての役割を果たしつつ、多職種が相互理解できる地域包括ケアシステムの構築が重要と指摘した。一方、在宅医療を担う医療機関が少ない現状や非会員の在宅専門医療機関への対応を課題として挙げた。
 また、平成30年度以降の地域医療介護総合確保基金の継続が不透明なことから、行政と医師会との積極的な関与の必要性が確認された。

第2分科会 災害時を想定した各医師会の体制整備

 当該分科会では、過去の災害の教訓を無駄にすることなく、今後予測される自然災害に備え、防災拠点として医師会が十分に機能を発揮するため検討を深めたいと前置き。災害時における情報連絡や医療体制など、活発に意見を交換した。府医からは緊急時の通信手段として、災害時有線電話のほか、「アマチュア無線局・大阪府医師会」の設置、大阪府・大阪市の防災災害無線などを報告。更に、大阪府災害対策本部を中心とした通信手段、医師会の災害コーディネーターによる医師会への支援、「広域災害救急情報システム(EMIS)」の現状も示した。
 そのほか、災害医療救護体制の整備・充実を目的に継続実施している「災害・外傷初期診療研修会」「災害医療基礎研修会」の概要について紹介した。

第3分科会 医師会活動における広報の役割・取り組み

 地域住民向けの取り組みについて、府医からは、ラジオ番組への出演や新聞へのコラム執筆、広報媒体の監修、「大阪の医療と福祉を考える公開討論会」「メディカルカフェ」など府民向けイベントを紹介。コスト意識を持ちながら多くの情報発信を心がけているとした。
 会員に向けた広報活動では、会報誌に関して、読んでもらうための工夫、ペーパーレス化などの意見交換に加え、広告掲載の在り方も討議。非会員に対しては「新研修医ウェルカムパーティー」の開催が報告されたほか、入会促進・継続へのアプローチを更に検討すべきとした。また、スマートフォンの利用者の増加に伴い、ウェブページのリニューアルやSNSの導入を開始した医師会から、特徴的な取り組みが提示された。