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時の話題

新たな専門医制度について

府医ニュース

2016年11月2日 第2801号

近畿医師会連合から日医に要望書

 新たな専門医制度については、地域医療の現場に混乱をもたらす可能性が懸念され、日本専門医機構は制度開始の1年延期を決定した。このような中、課題のひとつに挙げられているのが、19番目の基本領域として創設される「総合診療専門医」の運用である。総合診療専門医に関し、日本専門医機構は「来年度限りの暫定措置」として、日本プライマリ・ケア連合学会の「家庭医療専門医研修」の受講を勧めつつ、機構内に委員会を設置し、制度の在り方を検討している。総合診療専門医の指導医養成では、関係学会の協力が必要ではあるが、制度の在り方を主導するのは日本専門医機構であり、最終的に地域の声を十分反映した上で決定されるべきである。
 昭和53年、厚生省(当時)は米国への留学制度を発足させ、家庭医の制度化を目指した準備を開始した。59年度の厚生白書には「家庭医構想」について記述がなされ、翌60年6月、「家庭医に関する懇談会」が設置されるに至り、62年4月、同懇談会報告書で「家庭医制度」創設が打ち出された。しかし、日本医師会は英国の家庭医制度(GP)のように「国による管理」につながると強く反発し、頓挫したという経過がある。総合診療専門医について日医は、「学問的な位置付け」であり、診療報酬上の評価はないとの見解を示す。しかし、平成25年8月の「社会保障国民会議報告書」では、〝緩やかなゲートキーパー機能〟導入の必要性が記されている。総合診療専門医の導入を糸口に、厚生労働省が医療費抑制の手段として、家庭医構想の実現を再度企図しているのではないかとの疑念もくすぶる。
 総合診療専門医の養成を巡る関係学会と日本専門医機構による最近の議論の経緯をみると、結果的にかつての「家庭医構想」に通じると見受けられる。現実化すれば、診療報酬上の評価付けにより、日医が普及推進を図る「かかりつけ医」の形骸化が進み、かかりつけ医には総合診療専門医の取得が義務付けられることにもなりかねない。こうした動きを断固阻止しなければならず、日医が課題を会員と共有し、理解を深める必要がある。日本専門医機構には松原謙二・日医副会長が副理事長として参画するなど、一定の関与をしている。プロフェッショナルオートノミーを基盤に、同機構が適切な運用を図れるよう、日医においても会員への理解を促してもらいたい。
 近畿医師会連合(今期委員長=空地顕一・兵庫県医師会長)は、10月7日付で、横倉義武・日医会長に本旨を『要望書』としてまとめ、提出した。かかりつけ医による医療提供体制の推進を強化し、地域医療を守ること、そして、国民の利益となる新たな専門医制度となるよう、強く要望するものである。