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医師・医療関係者のみなさまへ

時事

糖尿病連携手帳を持っておられますか?7

府医ニュース

2016年10月5日 第2798号

情報管理とトリアージ体制

 中核病院が地域の医療情報バンクとしての地位を確立するには、糖尿病連携手帳(以下、糖手帳)などの患者情報を配信し、地域に専門的な概念を広めただけでは十分とはいえない。日常診療では、病気の概念を伝えるよりも「何を食べたらよいのか」「眠れない」など、診療の方向性とあまり関係のないことに終始する。これらを統合しながら長期的な視野に立ち、専門的な方向へ志向していくには、細かい事柄でさえ双方向の情報のやりとりが必要となる。しかし、こうした地域と双方向の情報をすべて処理するには、医師だけの力量では限界がある。
 これまでは診療所医師に糖手帳を配信してきたが、今年からは歯科診療所や調剤薬局、介護施設にも拡大した。情報量は数倍になり、質問内容は特定の患者に関する医学的なものから日常生活にまで及ぶ。配信元の当科が対応すべきであるが、数が多くなるほど医師ひとりで処理するには限界があるとの不安もあった。しかし、糖手帳を日常診療で扱うのは医師だけでなく、コメディカルも大きく関与してきた。院外から質問があっても、各担当の専門家が対応可能であることを十分に確認し、その上で拡大路線をとった。記入項目の栄養指導とフットケアは、管理栄養士と看護師が担当し、他の職種とともに糖尿病チームとして定期的に会合を設け、お互いの意見を調整している。多くのメンバーが私の考えを理解しているので、チームで統制のとれた対応ができる。現在、糖手帳に関与するコメディカルは、診療報酬という現実的な理由があり、当院では上記2職種だけであるが、制度の改革とともに全職種が参加できる体制になるであろう。
 日本糖尿病協会では糖尿病療養指導士という資格制度を設けている。高水準のメンバーで志気が非常に高い。生活習慣病は医学的に解決できないことも多く、医師という職業はかえってマイナスに働くこともある。日本糖尿病学会では医師とコメディカルは同等であり、生活習慣管理に重点をおいたシンポジウムなど、他の医学系学会とは雰囲気が異なった多方面にわたる研究が発表されている。また、当院の多くの科ではコメディカルが自主研究を進める独自性を持つ。お互いの立場を尊重しながら患者に対応している。今回、糖手帳を広域に配信するのと同時に、看護部を中心とした『南河内糖尿病を見守るNurseの会』という研究会を立ち上げた。当科を挙げてバックアップし、地域からの参加者は半年で数倍に増加した。特に、医師会との連携も十分に取れている。糖手帳の地域医療における臨床効果は即答できるものではないが、関心の高まりという間接的指標では、かなり効果があったと結論できる。
 この研究会には、「地域における情報トリアージ経路を作る」との目的がある。膨大な疑問点が一部門に集中するのを回避し、適切な部門へとつなぐことで迅速な回答が可能になる。そのためには、まず部門ごとの顔を地域で覚えてもらう必要がある。私にも質問がくるが、医師でなければ答えられない内容に限定されている。その機能が外来レベルでは実働し、あとは「地域内でのトリアージ経路の確立」というところまで来ている。糖手帳をなぜここまで推進してきたか――その理由は、糖尿病学会・協会主導で既に地域医療システムの原型ができあがっていることにある。「クリティカルパス」と言われなくても糖手帳があり、「トリアージ」と言われなくても糖尿病チームがある。糖尿病チームはその志気の高さで、地域と呼応した院内トリアージ体制を自主的に作ることが可能であった。地域包括ケアは各医療・介護機関間での新たなシステムのように思われるが、有志が寄り合い、垣根を越えた体制を創ることで可能となる。その中心には糖手帳のような精神性の高い核を置きながら、診療チームの輪を広げていく方法論があることを示すことができた。(晴)