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時の話題

基準病床数と必要病床数

府医ニュース

2016年9月7日 第2795号

地域医療構想の中で整理

 戦後の復興期、医療機関の量的整備が急務とされる中、昭和23年、医療水準の確保を図るために医療法が制定され、病院の施設基準が創設された。60年、医療施設の量的整備が全国的にほぼ達成されたことにより、医療資源の地域偏在の是正と医療施設の連携を目指して医療計画制度を導入、二次医療圏ごとに必要病床数(地域で必要とされる病床数)が設定された。
 平成12年、第四次医療法改正では、医療計画制度が見直され、療養病床、一般病床が創設されるとともに必要病床数は基準病床数へと名称が変更された。26年の第六次改正では病床機能報告制度が創設され、医療計画の期間が5年から6年に変更され、介護保険事業計画(3年計画)との一体的な作成を可能とした。当初、基準病床数制度は、病床過剰地域から非過剰地域へ誘導することを通じて病床の地域的偏在を是正し、全国的に一定水準以上の医療を確保することを目的として制度化された。
 基準病床数の設定は、全国統一の算定式により算定され、二次医療圏ごとに規定されている。一般病床・療養病床は、二次医療圏ごとの性別・年齢階級別人口、病床利用率等から、精神病床は、都道府県の年齢階級別人口、1年以上継続入院している割合、病床利用率等から計算される。結核病床は、都道府県において結核の予防等を図るために必要な数を、感染病床については、都道府県の特定感染症指定医療機関等の感染症病床の合計数を基準にいずれも知事が定めている。既存病床数が基準病床数を超える地域(病床過剰地域)では、知事が公的医療機関等の開設・増床を許可しないことができる。ただし、特例措置として救急医療や治験のための病床など、更なる整備が必要となる一定の病床については、病床過剰地域であっても整備することができ、一般住民に対する医療を行わない等の一定の病床は既存病床数に算定しない(病床数の補正)。
 このように12年から基準病床制度が始まり、現在では「病床が過剰」との認識から特例措置以外での増床はほとんど認められていない。一方、26年の第六次改正時に創設された病床機能報告制度により、37(2025)年における二次医療圏の必要病床数が示され、都道府県ごとに地域医療構想が策定されつつある。大阪府では長らく基準病床数は過剰とされてきたが、病床機能報告制度では必要病床数が不足している結果となった。
 つまり、大阪府のような都市部では、高齢化の進展に伴って急速な医療需要の高まりが見込まれる。基準病床数は、医療計画で定める二次医療圏ごとの「現時点で必要とされる病床数」であり、地域医療構想における必要病床数は、「37年時点に予想される必要病床数」である。次期医療計画に向けて、厚生労働省「医療計画の見直し等に関する検討会」において、地域医療構想における必要病床数と基準病床数との関係が整理される予定である。現在、各医療圏で行われている「病床機能懇話会」「保健医療協議会」での議論を尊重し、地域特性を考慮した医療計画の策定が求められる。