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時事
府医ニュース
2016年8月31日 第2794号
8月10日、厚生労働省「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」から「これまでの議論の整理」が公表された。平成30年度から35年度までの第三期特定健康診査等実施計画期間に向けて、現時点での見直しの議論をとりまとめたもので、「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」での科学的知見の整理を前提としつつ、加えて、生活習慣病対策全体を俯瞰した視点、実施体制、実現可能性と効率性、実施率、費用対効果の視点から検討を行ったものと位置付けている。更に「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」での議論も踏まえ、健診項目の整合性にも配慮したとしている。
腹囲は、現行の基準(男性85cm以上、女性90cm以上)を維持し、健診項目についても、現在実施している健診項目等を基本的に維持するとされた。
基本的な項目において、LDLコレステロールの替わりに、総コレステロール及びHDLコレステロールから算出されるnon-HDLコレステロールを使用することの可否については、労働安全衛生法の定期健康診断の見直しも踏まえ、引き続き検討するとされた。
詳細な健診項目で、心電図及び眼底検査対象者の選定に関し、前年ではなく、当該年の血圧や問診票の情報で判断するとした。また、新たに、血清クレアチニン検査を追加し、eGFRで腎機能を評価するとされた。対象者は、当該年の検査結果を用いて選定した場合、採血を2回実施する必要性が生じるため、設定年齢や運用方法について、別途検討すると先送りしている。
標準的な質問票については、一部文言の修正の他、「食事をかんで食べる時の状態」の質問が加えられ、「この1年間で体重の増減が±3kg以上あった」が削除された。
なお、non-HDLコレステロール、随時血糖、血清クレアチニン(eGFR)の受診勧奨判定値及び保健指導判定値については、更なる科学的な知見の整理に基づき決定するとされた。
さて、この間、"非肥満"の、血圧・血糖・脂質等の危険因子保有者への介入が議論になってきた。健康局が事務局を務める「在り方に関する検討会」では、「総合的な生活習慣病対策として捉えていく必要がある」として、現行特定保健指導の対象者と同等程度の介入を求めていたが、保険局が担当する本検討会では、そもそも特定健診は「高齢者の医療の確保に関する法律及び政令において、生活習慣病であって内臓脂肪の蓄積に起因するものに関して実施するとされている」ことを根拠に、いわゆる"隠れメタボ"対策については「引き続き、検討を行う」として、明確な位置付けを避けた。
もともと本制度は、18年当時、経済財政諮問会議の民間委員による医療費の総額キャップ制提案への対抗策として打ち出された出自がある。それに縛られ続けると、いずれ「ボタンの掛け違い」との歴史的な評価が下される時が来るのかもしれない。(学)