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医師・医療関係者のみなさまへ

外傷患者へのアプローチ手順を実習

府医ニュース

2016年8月17日 第2793号

災害・外傷初期診療研修会

 大阪府医師会では、災害発生時の外傷救急診療における「初期診療の標準化」に向けて、診療所などの医師や看護師を対象に「災害・外傷初期診療研修会」を開催している。本研修会は、外傷初期診療の知識や診療技術などのポイントを1日で習得できる構成となっており、平成24年1月から実施。28年度第1回・第2回(通算28・29回目)研修会を7月17日・18日に行い、2日間で計72人が受講した。
 はじめに、林靖之氏(済生会千里病院副院長兼千里救命救急センター長)が、本研修会の概要および外傷診療の考え方や具体的方法について説明した。災害などの緊急時には、診療所などにおいても外傷患者に対応する必要があると言及。限られた時間の中で、誰もが同じように診察、処置を行えることが重要とした。その上で、外傷初期診療ガイドラインに記載されている生命維持のための対処「プライマリーサーベイ」に特化した、ABCDEアプローチについて紹介した。「気道(Airway)」「呼吸(Breathing)」「循環(Circulation)」「意識(Dysfunction of CNS)」「体温(Exposure・Environment)」の順に評価と処置を行うもので、ひとつずつ進めることで救命できると強調。その後、これらに「家族対応(Family)」を加えた6つの技術を習得すべく、受講者はA~Fの各スキルブースに分かれ、それぞれに異常が見付かった際の対応を学んだ。
 午後からは、災害・トリアージについて講義が行われた(17日:鍜冶有登氏〈岸和田徳洲会病院救命救急センター部長〉、18日:上尾光弘氏〈大阪医療センター救命救急センター医長〉)。災害時には、医療の需要と供給のバランスが破綻し、通常の救急医療では対応しきれないと説明。予想外の事態に対応する準備が必要とした。また、トリアージについて解説。多数の傷病者の中から最優先治療群の「赤タグ」を見付け出すことが目的であり、患者の状態が刻々と変化するため、何度も繰り返して行うことが重要との指摘がなされた。その後の「シナリオステーション」では、実際の医療現場を想定したシナリオを用意。外傷診療用のモデル人形を用いた実技研修が実施され、各状況に応じた救命処置に取り組んだ。
 なお、今年度予定されている同研修会(第30~33回)は、いずれも定員に達しており受け付けを終了している。