
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2016年3月30日 第2779号
此花区医師会(木下隆弘会長)は、大阪市認知症地域医療支援研修事業の一環として認知症地域医療研修会(西部地域)を2月25日午後、大阪市内で開催した。当日は、かかりつけ医として認知症患者の支援に取り組む会員らが参集した。
冒頭、木下会長はあいさつで、大阪市は全国的に見ても高齢化率が高く、認知症も増加しているとして、団塊の世代が後期高齢者となる2025年に向けて認知症の支援体制整備の必要性を語った。
司会を務める島村裕理事の紹介により登壇した中西亜紀氏(大阪市立弘済院附属病院副院長)は、「認知症に気づいたら――神経心理学的検査の実際と支援のつなぎ」をテーマに講演。かかりつけ医に期待される役割として、認知症の発見、患者の支援・指導、専門医療施設の紹介などを挙げた。更に、認知症を「一度発達した知的能力が、後天的な脳の器質性変化により慢性進行性に低下して社会生活に支障を来した状態」と定義した上で、前頭側頭型認知症、脳血管性認知症などでは、認知症でも必ずしも記憶障害を伴うとは限らないと指摘。その他、うつ・せん妄の症状や内分泌疾患、代謝障害などとの鑑別診断が重要と強調した。
引き続き、岩本友希氏(大阪市立弘済院附属病院臨床心理士)が「実践!神経心理検査」と題して、改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS―R)とミニメンタルステート検査(MMSE)による検査を実演。木下会長も参加し、検査の採点・評価方法の解説を行った。また、中西氏は、MMSEの留意点として、▽記憶による負荷が少ない分、記憶障害を持つ人の場合、HDS―Rより得点が高く出る傾向がある▽まひなどの運動障害が検査結果に影響を与える可能性がある▽教育年数の影響を受けやすい――点を挙げた。
最後に、江川紀子氏(大阪市社会福祉協議会福祉総括室地域福祉課認知症地域支援推進員)が「介護から医療への支援のつなぎ――『認知症の人の受診のための連携シート』の活用について」と題して講演。認知症患者とその家族と地域を支えることを目的とする「平成27年度認知症対策連携強化事業」について報告を行った。連携シートの活用により、医療職と介護職間での円滑なコミュニケーションや患者の情報共有を進めていると紹介。認知症患者支援のためには、1.自己決定2.自らの力を最大限に使って暮らすこと3.住み慣れた地域で継続性のある暮らし――を支える視点が大切との見解を示した。