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府医ニュース

2016年2月17日 第2775号

◆冬の味覚の王様は、カニであろう。関西では、日本海の松葉やズワイが親しまれている。カニを楽しむには、丈夫な殻に手間取る。
◆カニの殻は、キチン線維の束が、何層にも重なった階層構造である。硬さとしなやかさの素である。最近、10ナノ(10億分の1)メーターと極めて細いが鉄鋼なみの強さのキチンナノファイバーを取り出す技術が開発された。人工線維では足元にも及ばない、優秀な生体線維の誕生だ。
◆キチンナノファイバーは丈夫なだけでなく水に分散し、添加剤に使いよい。透明性も損なわず、デジタル機器の画面などでの活用が目指されている。皮フに塗ると、乾燥や紫外線の保護膜になりそうだ。コラーゲン生成促進作用もありそうで、水々しい皮フをもたらすかもしれぬ。
◆殻を砕くだけではナノファイバーはできない。ところが、石臼を使って磨り潰すと、ナノファイバーができた。ぶち切るのではなく、線維をほぐすことらしい。簡便な方法ではなく、伝統的な技術を活用する見事な温故知新の賜である。(翔)