TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

本日休診

ここに地終わり 海始まる

府医ニュース

2016年2月3日 第2774号

 私達の乗った車は、木が生えていない丘陵地帯の緩やかにカーブする道を、岬の先端に向かって走っていました。やがて、前方にてっぺんに十字架がのった碑が見えて来ました。その向こうに広がる海は、大西洋!
 ユーラシア大陸の最西端、ポルトガルのロカ岬です。岬の先端に立つ碑には、ポルトガルの16世紀の詩人カモンイスの詩の一節「ここに地終わり海始まる」が刻まれています。
 子どもの頃、地図帳を眺めて、世界の最果ての地(と自分が思う場所)について、ここはどんな風景なのだろうと想像を巡らせていました。今のようにネットで簡単に写真が見られる時代ではありませんでした。私がポルトガルのロカ岬がユーラシア大陸の最西端であることを知ったのは、いつの頃だったのでしょう。
 岬の先端に立って、目の前に広がる島影ひとつない大西洋を見ていると、大航海時代のポルトガル人達がこの海に乗り出していったのだと、実感として分かるような気がしました。「地終わる」ので海へ出て行ったのであろうと。その中には、広大な大陸の反対側に浮かぶ島国に到達した人達もいました。
 しかし、「最果ての地」だと思うのは旅行者の感慨であり、近辺に住んでいる人達にとっては、日常生活の場でしょう。岬近くの村の小さなカフェで、数人のおそらく近所のおじさん達が、トランプに興じていました。「ユーラシア大陸の果て」でトランプに興じるおじさん達は、絵になる光景でした。(瞳)