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時事

患者の望む「終末期医療」

府医ニュース

2015年12月2日 第2768号

全国に相談支援チームを整備

 厚生労働省は、治療による回復の見込みがなく、死期が迫った場合に、患者と家族の不安や悩みを聞き、看取りを含む終末期医療の選択肢などの必要な情報を提供する専門の相談支援チームの整備事業を、平成28年度から全都道府県で実施する。
 26年3月の『終末期医療に関する意識調査等検討会報告書』によると、自身の死が近い場合に受けたい医療や受けたくない医療に関する家族との話し合いでは、「全く話し合ったことがない」が一般国民の56%である。また、自分で判断できなくなった場合に備えて、どのような治療を受けたいか、あるいは受けたくないか等を記載した書面をあらかじめ作成しておくことについて、70%が賛成していたが、実際に作成しているのはわずか3%であった。
 終末期医療では、患者本人の意思が分からず家族が悩んだり、医療現場が対応に苦慮したりするケースが多い。支援チームの相談員は、望む最期を迎えられるように患者と話し合い、治療方針の決定にも関与する。
 厚労省は全国200カ所程度の医療機関に支援チームを編成し、各都道府県に少なくとも1カ所以上設置する方向で検討している。相談員には、終末期医療の意思決定に関連する法的知識や臨床倫理、合意形成の手順など専門的な研修を受けた医師、看護師のほか、在宅療養に向けた助言など生活面を支える医療ソーシャルワーカーら計5人程度を想定する。
 メンバーは患者が意思表示をできる段階で、1.病院や自宅など、人生の最終段階をどこで迎えたいか、2.延命のために人工呼吸器装着や蘇生処置を行うか、3.胃ろうなどでの栄養補給をしたいか、4.痛みを緩和するための投薬を行うか――などについて患者と話し合い、情報不足に陥りがちな患者・家族の不安を取り除き、希望がかなうよう調整する。意思表示ができなくなった場合に備え、患者の意思を事前に示しておく「事前指示書」も作成を促す。
 厚労省は26年度から全国の15医療機関で相談支援のモデル事業を実施。このうち10医療機関でチームと話し合った患者にアンケート調査をしたところ、約9割が「希望がより尊重された」、約8割が「不安や心配が和らいだ」と回答するなど一定の効果があると判断した。
 厚労省は相談支援チームの設置などを通じて、多くの国民に終末期医療の在り方について関心を高めてもらいたいとしている。一方、患者が本当に穏やかな最期を迎えられる環境を整えるには、在宅で看取りを担える人材の育成やシステムの構築、緩和ケアの充実も急がなければならない。(中)