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時事

厚労省が「薬局ビジョン」を公表

府医ニュース

2015年11月18日 第2766号

"患者のための"と銘打つ意味は

 10月23日、厚生労働省から「患者のための薬局ビジョン~『門前』から『かかりつけ』、そして『地域』へ~」が公表された。本ビジョンは、今年5月の経済財政諮問会議において厚生労働大臣から、地域包括ケアシステムの構築に向けた「プライマリケアの強化」の一環として、かかりつけ医に関する診療報酬評価の更なる検討と並び、医薬分業の原点に立ち返り57000の薬局すべてを患者本位のかかりつけ薬局に再編するために策定が表明されていたものである。
 背景には、規制改革会議の議論における「門前薬局が乱立し、服薬情報の一元的把握が必ずしもできていないなど、患者本位の医薬分業になっていない」「分業推進のため患者負担が大きくなる一方で、負担増加に見合うサービスの向上や効果を実感できない」などの指摘がある。
 ビジョンでは、全体を貫く基本的な考え方として「立地から機能へ」「対物業務から対人業務へ」「バラバラから1つへ」を提示している。そして、かかりつけ薬剤師・薬局が持つべき3つの機能に、1.服薬情報の一元的・継続的把握:主治医との連携、患者インタビューやお薬手帳の内容把握を通じ、かかっている全ての医療機関や服用薬を把握し、薬学的管理・指導を実施▽複数のお薬手帳の一冊化・集約化を実施。2.24時間対応・在宅対応:開局時間外でも、副作用や飲み間違い、服用のタイミング等に関し随時電話相談を実施▽夜間・休日も在宅患者の症状悪化時には調剤を実施▽残薬管理のため在宅対応に積極的に関与。なお、単独での実施が困難な場合、調剤体制について近隣薬局や地区薬剤師会との連携を求めている。3.医療機関との連携:処方内容をチェックし、必要に応じ疑義照会や処方提案を実施▽調剤後も患者の状態を把握し、処方医へのフィードバックや残薬管理・服薬指導を行う▽医薬品等の相談や健康相談に対応し受診勧奨するほか、地域の関係機関と連携――を挙げている。
 また、患者のニーズに応じて充実・強化すべき機能として「健康サポート機能(本紙第2763号/10月21日付の本欄で解説)」と「高度薬学管理機能」の2つを示した。
 2035年までには立地も地域へ移行し、日常生活圏域単位で地域包括ケアの一翼を担うことを期待した。実現に向け、KPI(Key Performance Indicator)を活用したPDCAサイクルの実施や、ICTの活用(電子版お薬手帳の活用推進)を謳った。
 ちなみに、経済財政諮問会議で話題に上がった薬局数の削減については、今回のビジョンでは触れていない。
 大阪府の医薬分業率(処方箋受取率)は、全国平均より15%程度低い値で推移してきたが、それでも平成23年度には50%を突破している。ビジョン文中に「患者本位」の言葉が頻出することが、逆に現状を浮き彫りにしている感もあるが、地域包括ケアにおけるかかりつけ医との良きパートナーシップの構築が重要かつ急務なことに疑いはない。(学)