
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
府医ニュース
2015年11月4日 第2765号
大阪府医師会は9月26日午後、府医会館で平成27年度第2回周産期医療研修会を開催。「低酸素虚血性脳症(HIE)治療の最前線」をテーマに、2題の講演と総合討論が行われ、約70人が参加した。
冒頭のあいさつで笠原幹司・府医理事は、本研修会が日常診療の一助となるよう期待を寄せた。
研修は、北島博之氏(大阪府立母子保健総合医療センター新生児科部長)および椹木晋氏(関西医科大学附属枚方病院産科学婦人科学准教授)が座長を務め進行した。まず、「新生児低体温療法の現在」と題して、岩田欧介氏(久留米大学医学部小児科学准教授)が講演。岩田氏は、低体温療法が推進されるようになったきっかけは、国際蘇生連絡協議会(ILCOR)が2010年に公表した国際コンセンサス(CoSTR)であるとし、5~10年はこの内容が踏襲されるだろうと見通した。以後も、冷却の適正温度や時間、蘇生開始の遅れや蘇生後脳症との関連性、注意を要する因子(低炭酸ガスや高体温経験の有無・皮下脂肪壊死)、成人との共通点や相違点――などの研究が進められているが、2020年版に向けて日本から研究発表すべく準備中とし、安全性検証の後、700症例を収集したいと言及。予定している研究に各施設の協力を依頼した。なお、新生児への有効性が示された頭部冷却については、使用器具の違いから日本で行われるものと成果が異なると説明。より自然な体温管理が可能な全身冷却が望ましいと述べた。
「HIE児の臍帯血幹細胞による治療」と題して講演した佐藤義朗氏(名古屋大学医学部附属病院総合周産期母子医療センター新生児部門講師)は、幹細胞を用いた再生医療や幹細胞療法は、様々な臓器や疾患に対して研究されており、低酸素性虚血性脳症(HIE)にもその応用が期待されるとした。そのひとつとして、現在試験中の臍帯血幹細胞は、採取や使用に関する倫理的問題が少なく、自己の細胞を移植することで免疫拒絶反応に対する危惧も生じないことから、最も臨床応用しやすい幹細胞源であると紹介した。一方、自己臍帯血は出生時に採取する必要があるものの、日本では約半数が診療所で出生するため、採取できない例が相当数生じると予測。これに対応するため、入院後に採取可能もしくは事前に準備できる細胞として、骨髄単核球や間葉系幹細胞の有効性を動物実験にて検討中と加えた。
総合討論では、低体温療法および臍帯血幹細胞療法の研究に関し、大阪においてもNMCSの基幹病院を中心に協力体制を整えたいとの認識を確認した。