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ヒトは光合成をするのだろうか?

府医ニュース

2015年10月28日 第2764号

豊中市医師会 佐古田 三郎

 1932年にMax Kleiberが基礎代謝量は体重の4分の3乗に比例するという原著を報告した(B=B0M3/4)。簡単な方程式で、実に単細胞生物から象に至るまでの基礎代謝量を表現できているとは驚きである(Kleiberの法則)。
 この法則は植物にも応用されている。もしこれが正しいようなら、ニュートンの万有引力の法則と同程度の発見ではないだろうか。酸素消費量のような化学反応からのエネルギー産生という発想では追いつかない。生命体は容積によって一定のエネルギーを発生させる。そして、そのエネルギーはキャピラリー的な概念で、容積全体に行きわたる。そのキャピラリー的な運搬においては、植物の葉の葉脈、動物の毛細血管、そして単一細胞までをフラクタルの概念としてとらえればKleiberの法則が成立するような気もする。
 しかし、それでも容積単位で一定のエネルギーを発生するところに関して答えは出ない。そこで出たアイデアが、「動物も光合成をする」という奇抜な説である。真偽のほどは分からないが、全く否定できないような気がしている。
 植物はクロロフィルで光合成をするが、ヒトはメラニンで行うと述べられている。私は長年、どうして脳幹部にある黒質にメラニンがあるのだろうかと疑問に思ってきた。網膜は網膜色素細胞がメラニンを産生し、それを維持する。しかし、皮膚ではメラノサイトが産生し、ケラチノサイトがそれを維持する。これらはチロシナーゼで触媒されており、酵素依存的にメラニンが産生されている。
 しかし、黒質にチロシナーゼが存在する報告を私は見いだせておらず、その産生経路に関することも謎めいている。何らかの理由で黒質が高いエネルギー産生を要求する組織であるとすれば、光合成説も面白い。ちなみに、メラニンの光合成はどのような波長でも構わず傍に水さえあれば良いそうである。