紫陽花考

　あのシーボルト先生は紫陽花を標本にして持ち帰り、オタクサと命名したそうです。オタクサとはお滝さん、つまり楠本イネ女史の母親です。さぞや美しい方だと。
　ぢみ、つまり土壌のｐＨにより発色のもとになるアルミニウムの取り込みに差が出るので、青から赤紫に色調が変わるそうです。まるでリトマス試験紙みたいですが、この色素もリトマスゴケ由来だそうで、自然界のおりなす妙です。
　さて紫陽花の名所、箱根登山鉄道に参りました。芦ノ湖を挟んで富士山が望めるというので、外国のお客さんには大人気。沿線の紫陽花は肥料に工夫を凝らして観光用に発色にバラエティーを加えます。期間中は「あじさい号」という電車も運行されます。
　ゐのしし注意と表示が出るような山中の自生株なら単色になるはずですが、同じ枝でも微妙に差が出るそうです。（冬）
参考：吉村昭「ふぉん・しいほるとの娘」、「ブリタニカ国際百科事典」