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府医ニュース

2015年7月15日 第2754号

 ◆「小さくなって布団で寝ている妻がつらそうで、何もしてやれなくて、ただただ黙っているしかなかった」。顕微授精がうまくいかなかった夜の重苦しい様子を、作家のヒキタクニオ氏の実体験として、『ヒキタさん!ご懐妊ですよ』に書いている。
 ◆不妊治療の道のりは、「ゴールの見えない孤独なマラソンランナー」とも例えている。途中、夫婦仲の亀裂や義親との不和が生じ、離婚になることも少なくないという。金銭的負担から治療を諦めざるを得ないこともあり、その苦悩は計り知れない。
 ◆不妊カップルは10組に1組以上と言われ、最近では高齢不妊が増えている。今回、日本産婦人科学会が、不妊期間の定義を2年から1年に見直すと発表した。晩婚化、晩産化に伴い、早期での不妊治療の開始につなげるためだ。
 ◆国や行政は、少子化対策として体外受精や顕微授精に助成している。不妊治療の進歩も確かに高齢不妊に応えるものである。しかし、やはり若い世代から安心して出産と子育てができる社会環境の改善が先決である。(誠)