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時の話題

10月より医療事故調査制度がスタート

府医ニュース

2015年7月1日 第2753号

支援団体の活動にも十分な配慮を望む

 平成27年10月より医療事故調査制度(事故調制度)が始まる。これは15年越しの議論を経て成立したもので、医療安全の更なる推進とあわせて、医師が安心して診察できる環境整備の側面も期待される。
 事故調制度は11年1月の横浜市立大学医学部附属病院事件、同年2月の東京都立広尾病院事件が発端となり、13年に厚生労働省医療安全対策検討会議において、医療事故調査の制度化に向けた議論が始まった。その後、厚労省は20年に「医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」を公表したものの、行政処分や警察への通知などを巡り医療界が強く反発した。こうした動向を踏まえ、「医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会」(23年8月設置)、「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」(同24年2月)で慎重に論議を重ね、26年6月に医療・介護総合確保推進法が成立したことは記憶に新しい。その上で、同年11月には「医療事故調査制度の施行に係る検討会」を設置。27年3月に厚労省が同検討会の取りまとめを行い、本年10月より事故調制度がスタートする。
 事故調制度は、原因究明・再発防止を目的とし、個人の責任は追及しない。WHO(世界保健機関)のドラフトガイドラインに準拠し、秘匿・非懲罰・独立性が担保されている。対象となる医療事故は、「医療に起因した(疑いも含める)死亡事例」で、「管理者が予期しなかったもの」に限られる。対象となる事故が発生した場合、医療機関は院内調査に取り掛かるとともに第三者機関(センター)への届け出を行う。センターは民間組織で、再発防止策の共有だけを目的とする。当該届け出は管理者の判断を尊重し、罰則規定はない。
 管理者はセンターへの届け出と同時に、都道府県医師会などで組織する「医療事故調査等支援団体(支援団体)」に院内調査の支援を求め、中立性や透明性を担保する。支援団体は専門家チームを派遣し、必要に応じて死亡時画像診断(Ai)や解剖も行い、院内調査をサポートする。その上で、遺族への説明およびセンターへ報告がなされるが、報告書の取り扱いによっては医事紛争へと発展する懸念も否めない。情報管理の徹底や報告書の使途にも注意が必要である。また、院内事故調査の費用は原則として医療機関の負担となることや、支援団体の活動への資金が担保されていない課題も残る。前者については、保険での対応も検討されているが、医師が安心して診療に専念できるよう一層の配慮が望まれる。