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時事
府医ニュース
2015年6月3日 第2750号
5月18日、次世代ヘルスケア産業協議会による「アクションプラン2015」が取りまとめられた。この協議会は、平成25年6月策定の日本再興戦略に基づく「健康・医療戦略推進本部」の下、健康寿命延伸分野の市場創出及び産業育成に向け官民一体で検討を行う場として同年12月に設置された。今回の行動計画は、健康投資(需要面)と新事業創出(供給面)の2つのワーキンググループの活動を踏まえて作成されたもので、6月をめどに改定される成長戦略にも盛り込まれる予定とされている。
プランは3分野に分類されている。(1)医療分野では、「健康経営銘柄」等の大企業向け取り組みの継続とともに中小企業の健康経営の促進にも力を入れるとして、1.「健康経営ハンドブック」の策定・公表や、指導・助言を行う「健康経営アドバイザー制度」の創設、2.協会けんぽによる中小企業向け保健事業を通じた保険者機能の強化、3.健康経営優良企業認定制度の創設と、政策金利の優遇や保険制度上のインセンティブの付与を挙げている。ちなみに「健康経営」とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考えた戦略的な実践を意味する。従業員への健康投資は、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されている。
(2)介護分野では、地域包括ケアシステムを補完・充実する介護保険外サービスの活用により、高齢者のQOL向上(自立促進・介護費適正化)と介護事業者の保険外収入の確立(待遇改善等)を目指すとして、「保険外サービス活用ガイドブック(仮称)」の策定や、地域版協議会等を活用した地方展開を掲げている。
(3)地方創生では、予防・健康管理等のヘルスケア産業と、食・農、観光等の地域資源の融合により、新たな農業のブランド化(食・農×健康)や、地域・国外の新たな需要獲得(観光×健康)を実現したいとしている。健康に良い農産品に関するデータベースの構築や、ヘルスツーリズム(医学的根拠に基づく健康回復や維持、増進につながる観光)創出に向けた魅力的な地域作りの支援とともに、サービス品質の第三者認証スキームの構築を謳っている。
さて、本プラン冒頭の、目指すべき社会経済システムの項では、財政悪化を理由に社会保障サービスを制限せざるを得なくなる前に、国民が健康管理の習慣を持って長期にわたる社会参加を可能とし、社会への関わりが更なる健康維持に役立つ"正の循環"の実現が鍵としている。そのために、いわゆる生産年齢の段階から職員に健康管理を促す仕組みを企業・経済活動に組み込んでいくことや、定年後も生涯現役としてゆるやかに社会に関わり続けられるよう、地域の経済活動と一体化した社会参加を促す仕組みの構築が重要としている。
まさにごもっともであるが、経済界の価値観と医療のそれとは、時に大きな隔たりが存在する。社会保障と経済活動の、真のwin-win関係の模索が、大きな課題となろう。(学)