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府医ニュース
2015年5月27日 第2749号
資本主義は利潤を求め地理的空間的拡大を遂げ、電子金融空間まで進出した。しかし、物価金利の低下、成長の鈍化により思うような利潤があげられなくなり資本主義は終わりを迎えつつある……。『資本主義の終焉と歴史の危機』の中で、経済学者・水野和夫氏はこう述べている。フロンティア(周辺)を広げることによって、利潤率を高め、資本の自己増殖機能を持つシステムが資本主義である。ゼロ金利が続いている我が国は資本主義崩壊の危機にあるとも指摘する。これは現行の経済活動範囲では右肩上がりになるフロンティアは我が国にはほとんど残されていないことを示す。
しかし国内外のグローバル金融資本やその支持者達は、更なる利潤を我が国に求め、改革を進めた。それにより本来、自由経済がなじまない分野(社会的共通資本)にも、規制撤廃や文化を無視した過剰な文明の導入を進め、市場へ放り込もうとしている。郵政であり農業であり様々な公共サービスの分野である。
医療に目を向けると、医療機関の経営に関する規制の撤廃、医師数やベッド数の「適正配置」という名の新たな制度改革、そして国民皆保険制度を揺るがす恐れのある患者申出療養(混合診療)、医療のビックデータ化など、じっくり考えると後ろにグローバル金融資本の思惑(医療の市場化)が見え隠れする。
現行の制度に全く問題がないとは言わない。ただ、一部の問題を大きく扱い、大衆を利用し、すべてをグレートリセットするという「全体主義的」な「構造改革」の裏側には、株式と無関係だった分野を市場化するという流れがあることを理解すべきだ。刹那的なご破算主義によって、良質な我が国の医療が市場の新たなフロンティアになるどころか一時的なバブルと化すという可能性は大いにあるのだ。(真)