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医師・医療関係者のみなさまへ

医療問題研究委員会で自見はなこ氏が講演

府医ニュース

2015年5月27日 第2749号

国民と医療界を結ぶ架け橋に

 大阪府医師会は4月8日午後、平成27年度第1回医療問題研究委員会を開催。来年7月に実施される参議院比例代表選挙の日本医師連盟推薦候補者・自見はなこ氏(東京都医師会所属・小児科医)を招き、委員らと意見交換を行った。

医師会のたゆまぬ努力が医療を支える

 はじめに自見氏が、「なぜ政治家をめざすのか?」と題して意見表明。司会は加納康至理事、座長は茂松茂人副会長が務めた。
 自見氏は当初、国際機関での就職を志望していたが、祖父や父が医師という環境で育った影響もあり、「直接人に触れて役立つ仕事に就きたい」と一念発起。医学部に学士入学を果たし、内科・小児科での開業を目標に勤務医生活を送っていた。その傍ら、勤務医から国政に転じた父(自見庄三郎氏/元郵政相・元内閣府特命担当相〈金融〉)をサポートする中で、多くのことに気付かされたと述懐。「医療は社会的インフラであり、体を張って取り組む医療者の処遇は与えられて当然」と考えていたが、陳情を受ける立場になり、その認識を改め、政治の重要性を感じたとした。そして、国民皆保険制度を堅持すべく、提言や交渉に臨む医師会のたゆまぬ取り組みが、我が国の医療を支えていると強調した。

1本の電話が公募のきっかけ 国民皆保険制度の大切さ痛感

 続いて、看護師からの依頼で、当直中に英語での電話相談に対応した際のエピソードを披露した。ハワイに住む女性から、「都内に滞在中の子どもが腹痛に苦しんでいる」との訴えに、自見氏は症状を聞き取った上で、ウイルス性胃腸炎に関する医療的なアドバイスを実施。女性は「私が加入する医療保険では医師に相談できない。日本はなんて素晴らしい国だ」と号泣したと明かした。
 自見氏は、この出来事が日医連推薦候補者に公募するきっかけになったと言及。国民皆保険制度の大切さを痛感するとともに、所得の多寡により適切な医療が受けられない事態を憂慮した。更に、医療格差が常態化する時代になれば、自身は医師としてモチベーションを維持することができないとし、「そういう社会になってほしくない」と吐露。「国民皆保険制度を守り、国民と医療界を結ぶ架け橋になりたいと決意した」と語った。

忌憚のない意見を財産に医療界を代表し声を届けたい

 また、父の自見庄三郎氏が国会議員当時に対峙した郵政民営化に関し、今後、医療界が直面する構図に類似していると指摘。日本の文化と風土に根差した制度が、市場原理主義によって崩壊される危機感を表明した。そして、政治を志す上で大切なことは、自身がどのような見識を持ち、「何を目的に何を訴えるか」であると強調。忌憚のない意見を自分の財産にし、医療界の声を届ける存在となれるよう活動していくと抱負を述べた。
 自見氏は現在、勤務医として診療を継続しながら、日医常任理事会にオブザーバーとして出席。週末は全国各地に出向き、精力的に医師会員らとの会合を重ねている。

意見交換

続いて出席委員との意見交換が行われた。ある委員からは、同じ小児科医として少子化対策にも力を入れてほしいとエールが送られた。医療と介護の連携では、介護側のシェアが高まる現状を踏まえ、医療側が積極的に関与できる体制を望む声が寄せられた。
 更に、TPPや非営利ホールディングカンパニー型法人など、医療への株式会社参入が懸念される動きに対する見解が求められた。
自見氏は、実態を把握、注視すると述べる一方、「どういう枠組みで制度設計されるか」が、その後の変化の起点にもなると指摘。これを踏まえ、早期段階のロビー活動の必要性を示唆した。

医師の処遇
「与えられて当然」からの意識改革を

 勤務医対策に関連しては、医師のライフステージに言及。卒後10年で一人前となり、それ以降、勤務医や開業医などの各立場から、組織や地域を牽引する存在になると持論を述べた。また、医師の処遇に関し、「与えられて当然」との意識を改めなければならないと強調。医療制度が国によって決定される中で、政策実現に向けた医師会の取り組みや、在るべき医師の姿など、医学教育の場で学ぶ機会を設けてほしいとした。
 最後に自見氏は、現実的な対応として、政権与党から「医療界の代弁者」を目指すとした。その上で、政治の場で力を示すには圧倒的な得票数を持つことが不可欠であると重ねて訴え、理解と協力を求めた。