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HIV地域医療連携研修会

府医ニュース

2015年3月4日 第2741号

地域医療機関と分担

 大阪府医師会は、地域医療介護総合確保基金を活用し、平成26年度HIV地域医療連携研修会を2月18日午後、府医会館で開催した。

HIV感染者の多様な医療ニーズに対応する地域医療体制図

 大阪府・大阪市は、平成23年度までにHIV/エイズ治療提供体制や検査体制に関する普及啓発に重点化した府医への事業委託を終了。しかし府医では事業の必要性に鑑み、24年度からエイズ予防財団の協力を得て啓発活動を継続し、昨秋も研修会を開催した。更に26年度は、地域医療介護総合確保基金を活用した「HIV感染者の多様な医療ニーズに対応できる地域医療体制構築事業」を受託することとなった。
 研修会で宮川松剛理事は、同事業ではHIV感染者と一般診療所とのかかわりや透析医療機関との協力体制を柱に展開したいと表明。従前からの課題である、エイズ診療拠点病院と一般診療所との役割分担の重要性にも言及し、来年度には一般医療機関および透析医療機関に対する意向調査を通じ要点把握と検討を行いたいと述べた。
 研修会は、府医感染症対策・予防接種問題検討委員会の中浜力委員が座長を務め進行。まず、大阪府健康医療部保健医療室医療対策課参事の田邉雅章氏が「HIV感染者の多様な医療ニーズに対応できる地域医療体制構築事業」を紹介した。田邉氏はHIVは治療法の進歩により慢性疾患となり、施策が感染者の生活支援に重点化していると説明。大阪における26年の新規感染者報告数はHIV感染者155名・エイズ患者52名、累計ではHIV感染者2121名・エイズ患者688名を数えると報告。感染者が適切な多剤併用療法により無症候期を迎えた時、近隣医療機関で一般診療を受けられるよう、体制の確保に努めたいとした。また、HIV感染者は腎炎や急性腎不全による腎障害を合併しやすく透析導入例が増えると見込んだ。そして、HIV感染者の多様な医療ニーズに対応できる地域医療体制については、国立病院機構大阪医療センター(ブロック拠点病院)と中核拠点病院3施設・拠点病院12施設に加え、各診療科医療機関と透析診療所を合わせた協力医療機関で治療を行える体制の構築を目指すと語った。
 次に、白阪琢磨氏(国立病院機構大阪医療センター、HIV/AIDS先端医療開発センター)が「HIV陽性者の一般診療における留意点」を解説。抗HIV薬の服薬が1日1回1錠の時代を迎え、HIV感染症が不治の特別な病からコントロール可能な一般的な病へと疾病概念が変化したことを力説。HIV感染者の8割強が病気やけがの治療で拠点病院以外の多科の医療機関を受診する一方、感染者が治療拒否や差別的言動を懸念し、HIVキャリアである旨を伝えたのは3割弱と報告。白阪氏は肝炎ウイルス対策などに準じた医療機関の標準的予防策で診療環境は十分整うと強調し、HIV治療を継続中の感染者で血中ウイルス量が測定可能未満なら感染しないとした。万一の暴露後対策でも労災保険適用など整備がされており、HIV感染者への適切な医療提供体制の確立に協力を要請した。
 府医は3月25日に同会館で、主に透析医療機関等所属の医療従事者を対象にエイズ診療拠点病院との連携に関する研修会を開く。