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医師・医療関係者のみなさまへ

大阪府訪問看護ステーション20周年シンポジウム

府医ニュース

2015年2月25日 第2740号

訪問看護が果たす役割

 平成6年に大阪府内の訪問看護ステーション36事業所による連絡会が発足し、以来、在宅医療の充実に取り組み20年余が経過した。これを契機として、26年4月に一般社団化した大阪府訪問看護ステーション協会(協会長=伊藤ヒロコ・大阪府看護協会長/480事業所参画)は2月14日午後、大阪府医師会館に約160名を集め、「地域包括ケア推進のために訪問看護が果たす役割を考える」と題する基調講演・シンポジウムを開催した。

在宅医療の担い手として期待

 開会に際して伊藤協会長は、超高齢社会を迎えて医療提供の重点が施設から在宅へと変革する中で、訪問看護師への期待は大きく、大阪の在宅医療を一歩ずつ前進させようとあいさつした。続いて、榮木教子・同協会副会長が訪問看護の組織づくりから今日までの活動経過を概説。新たな財政支援制度を活用した大阪府訪問看護推進総合事業の受託を報告するとともに、訪問看護師は在宅医療コーディネータとして活躍が期待されており、地域に草の根のネットワークを広げ、在宅療養の推進に貢献したいと述べた。
 第1部の基調講演では、茂松茂人・府医副会長(同協会副会長)を座長に進行。まず、「大阪の地域包括ケアにおける訪問看護への期待」と題して、上家和子・大阪府健康医療部長が登壇。訪問看護ステーションが地域の看護力として重要な役割を果たすとし、人材確保など環境改善の仕組みづくりによる運営の安定化を要請した。また、訪問看護師の看護力強化に特定行為研修の受講を促すとともに、地域の医療事情や住民の生活状況をよく知る存在として、介護職とも接点が多い点に着目。在宅医療コーディネータ機能の発揮を求めた。
 次に、中尾正俊・府医副会長(同協会理事)が「かかりつけ医から訪問看護に望むこと」と題して講演。在宅医療を推進する上での課題として24時間体制の構築を挙げた。加えて、患者家族が抱く緊急時対応や今後の療養などの不安を取り除くことや、入院時から退院支援に取り掛かるといった家族への支援の重要性を明示。そして、かかりつけ医が訪問看護師に望むこととして、1.訪問看護と訪問介護の違いの説明、2.終末期において家族の同意の下で自然な看取り、3.医師と訪問看護師が連携し死の徴候を確認――に言及。最後に、地域における在宅医療提供体制において、医療者間のみならず、医療者側から介護側の橋渡し役を含めたコーディネータ機能の発揮に期待を寄せた。
 第2部のシンポジウムでは、歯科医師・薬剤師・退院調整看護師・介護福祉士・介護支援専門員の各職種からみた訪問看護の役割を発表し、訪問看護師との連携内容を説明。総括で中尾副会長は、介護報酬改定に伴う多職種への金銭的評価に言及。国施策の矛盾を挙げつつも、各専門職種とともに街づくりに努力したいと語った。
 閉会に際し茂松副会長は、国は施策を後退させて国民を冷遇しており、個人の尊厳を守りいきいきと社会参加できる体制の構築実現には相当数の課題を解決しなければならないと指摘。一方で、基金を活用した事業の展開により患者の療養生活を支援することへの期待もあると述べ、一致団結して住み慣れた地域で暮らせる体制を築きたいと結んだ。