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時事

特定保健指導の効果検証、第2次公表

府医ニュース

2014年12月3日 第2732号

何としてでも出したかった結果の行方は?

 11月21日、厚生労働省「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」が開催され、「医療費適正化効果等の検証のためのワーキンググループ」による第2次中間取りまとめ(案)が公表された。この部会は、特定保健指導の効果をレセプト情報・特定健康診査等情報データベース(NDB)を活用して学術的に検証するため、同検討会の下に、会議を非公開として平成24年12月に設置されたものである。
 先立って今年4月には、検査値への影響に関して、20~23年度4年間分のデータを用いて「特定保健指導終了者は各年度、すべての性・年齢階級別において、腹囲、BMI、体重が大きく減少しており、血糖、血圧、脂質等も改善している」と結果を発表していた。
 今回の分析は、保険診療費の短期的な効果を検証。前記4年度すべてにおいてレセプトデータとの突合率が80%以上の保険者のデータ(365保険者:協会けんぽは含まず、年度により約20~23万人)を対象に、メタボリックシンドローム関連疾患(高血圧症、脂質異常症、糖尿病の3疾患)の入院外1人当たり医療費を比較している。3疾患関連の傷病名コードおよび医薬品コードを持つレセプトデータのみを対象にし、3疾患以外の医療費を除外しきれないため、特に大きな影響があるとして、がんに関連するレセプトは分析から除外した。
 結果は、積極的支援参加者と不参加者の比較で、翌年度には全体で、男性で7030~5020円、女性で7550~2590円の概ね有意な差異が見られるなど、「40~64歳に対する積極的支援」「65歳以上に対する動機付け支援」に関し、3疾患の医療費への一定の効果が示唆されたとまとめている。また、この両群で効果が高く、年度を経るにつれ効果が低減する点は、4月に公表した検査値の改善効果と一致した傾向とした。なお、留意点に、特定保健指導を実施した当該年度で既に参加者・不参加者に医療費の差が見られ、もともとの健康意識の違いの影響を指摘している。
 今後は、長期的な、すなわち脳卒中や心筋梗塞、糖尿病合併症にかかる医療費への影響について、推計モデルを活用した分析結果を今年度中に公表し、データヘルス(レセプト・健診情報等に基づく保健事業)を支援する観点から、各保険者が医療費適正化効果を検証できる推計ツールを作成するとともに、特定保健指導の質の向上に向けた実施方法の検証を行いたいと展望している。
 もともと特定健診・保健指導制度は、18年当時、経済財政諮問会議の民間委員による医療費の総額キャップ制提案への対抗策として打ち出された側面を持つ。国民健康保険中央会は、19年6月発行の実施手引きの中で「保険者をはじめ医療関係者は、何が何でも医療費の効率化につながったという結果を出さなくてはならない崖っぷちに立たされて」いると表現した。果たして所期の目的は、達成されるだろうか。(学)