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府医ニュース
2014年11月26日 第2731号
TiSAという言葉を初めて目にする読者がほとんどではないだろうか。TiSAとはWTOに加盟する有志の国・地域における、保険、医療、通信、投資などのサービス貿易の自由化協定である。2013年6月に交渉が既に始まっているのだが、省庁関係のホームページでは外務省と独立行政法人経済産業研究所の資料でしか現在のところ見つけることができなかった。TPPとの違いは、貿易の対象分野がモノ(農作物、工業製品など)以外の公共サービスを含むサービス分野を貿易の商品として扱うということ。TPPと似ている事項としては、ラチェット条項(例:民営化されたものを再び公共化できない)がある。更には、ISD条項や、交渉内容が一定期間秘密となるものも存在するとされている。
TPPでは、JAなど第一次産業の団体を中心に、日本の文化も含め業界のルールが変えられてしまうと反対運動が継続中である。一方、TiSAはサービス産業に分類される業界の問題である。関税問題があまりない領域であるため、対象団体はTPPと比べ少ない。よって、皆保険制度などの公共サービスを守ろうと医師会が運動をしても孤立する可能性が高い。医療や公共サービスの営利化を是とする有識者やマスコミを中心に、医師会を狙い撃ちしたネガティブキャンペーンが巻き起こり、一気に営利化が進むことは想像に難くない。
今年亡くなられた経済学者・宇沢弘文氏は、医療や公共サービス、自然環境などを社会的共通資本とし、その分野に過剰な営利主義(新自由主義)が入ってはいけないとの考えを示された。TPPやTiSAはその社会的共通資本を狙い撃ちしたものである。大阪では医療特区が推進されようとしている。特区構想やTiSAによって、府内各地で進められている地域包括ケアシステムが、営利主義者に社会的共通資本を荒らされる場になってしまう可能性も大いにあるのだ。(真)
(参考文献:日医総研ワーキングペーパー№316「米国政府2014版『通商政策アジェンダ』とTiSA:医療界はTPPに続く米国 の〝第二の矢〟に備えよ」 坂口一樹)