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府医ニュース
2014年10月1日 第2726号
平成26年度近畿医師会連合定時委員総会(今期委員長=森洋一・京都府医師会長)が9月14日、京都市内のホテルで開催された。25年度決算や26年度事業計画・予算が承認されたほか、「医療保険」「地域医療」「医療安全」の3分科会では、日本医師会の役員を交えて喫緊の課題を討議した(分科会の模様は3面に掲載)。
総会の冒頭、森委員長は、8月の豪雨災害による福知山市の被災状況に言及。13医療機関の浸水被害を報告するとともに、見舞いや支援に謝意を述べた。また、6年前の主務担当から現在を述懐。社会状況は激変しているが、いまだ医療崩壊から免れる状況にないとした。東北地方における医学部新設に関しては、東日本大震災の被災地の医療支援に資するよう求めた。加えて、京都府の合計特殊出生率が全国的に低水準で推移しており、少子化問題に着目。少子高齢化の更なる進行は、社会の発展や活性化に多大な影響を及ぼすと憂慮し、高齢者施策の充実とあわせ、少子化対策の重要性を訴えた。
前期委員長を務めた寺下浩彰・和歌山県医師会長は、国民が安心できる医療環境の構築のため、近医連として一致団結する必要があると強調。その後、今期の近医連役員に関する報告が行われた。
来賓としてあいさつした横倉義武・日医会長は、新執行部の発足に際し掲げた基本方針「組織を強くする」「地域医療を支える」「将来の医療を考える」――を提示した。国民皆保険を堅持し、かかりつけ医を中心とした地域包括ケアを推進する上で、医師会の更なる組織強化が必要と明言。地区医師会員の日医への入会促進に取り組む構えを見せた。また、規制緩和や成長戦略の名の下、公的医療保険の給付を縮小しようとする動きを警戒。患者申出療養(仮称)に関しては、当初提案された選択療養と比べ、安全性・有効性の確認や将来の保険収載を目指すことが謳われたとしつつ、健康保険法の改正に向けた議論を注視していくと述べた。
続いて、山田啓二・京都府知事、地元選出の国会議員を代表して伊吹文明・衆議院議長が祝辞。更に、「第29回日本医学会総会2015関西」について、井村裕夫会頭が同総会のプログラム構成や特色を詳細に説明。あらためて事前参加登録を呼びかけた。
議事では、森委員長が議長を務め進行。山田和毅・和歌山県医師会副会長が25年度の会務を報告した後、平石英三・同県医師会理事が25年度決算を説明。前期監事を務めた伯井俊明・大阪府医師会長より監査報告が述べられ、拍手多数で承認された。 引き続き、26年度事業計画を安達秀樹・京都府医師会副会長、26年度予算を城守国斗・同理事が提案。いずれも可決承認された。その後、「国家戦略特区における過度な規制緩和、医学部新設反対」をはじめ、6項目にわたる決議(別掲参照)を採択した。
特別講演では「グローバル時代の教育と外交」と題して、同志社大学学長・村田晃嗣氏が登壇した。村田氏は日中の経済動向のほか、少子化問題、「世界大学ランキング」など、幅広く話題を提供。教育や外交分野は、数値で測り切れるものではなく、長期的な視点が求められるとした。村田氏の分かりやすく歯切れよい解説に、会場は大いに引き込まれた。 次回の定時委員総会は、府医の主務により、27年9月6日にシェラトン都ホテル大阪(大阪市天王寺区)で開催される。
現在の安倍政権はその強大な政権基盤を背景に強硬な政治を展開している。政府は、新自由主義的判断の下、経済成長と財政再建を主眼とした様々な政策を立案・実行しているが、特に医療分野においてはアベノミクス第三の矢である「日本再興戦略における成長産業」と位置付けた医療政策を強く打ち出している。その中でも国家戦略特区内における過度の規制緩和は国民皆保険制度を空洞化へと導き、医学部新設は地域からの指導医引き剥がしによる地域医療の弱体化を招く可能性が高く、これらには強く反対する。また今回、規制改革実施計画に盛り込まれた「患者申出療養制度(仮称)」は、形を変えた混合診療拡大策に他ならず、国民の生命・健康を損なう本制度の導入は断固容認できない。 今年の通常国会において成立した「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(医療・介護総合確保推進法)」には、これまで地域の実情に応じ民間主導にて構築されてきた医療提供体制を行政主導にて全国一律の再編へと導く政策が盛り込まれている。政府には今後、地域医療が混乱を来すことのない、地域の状況に応じた精緻な政策策定、推進を強く要望する。 また、現在交渉中のTPPに関しては、条約批准条件の設定如何によっては株式会社の医療機関経営参入や混合診療全面解禁へと繋がりかねず、国民皆保険制度が形骸化される恐れがあり、政府には交渉に際し慎重な判断を求めたい。 医療提供体制維持の観点から看過できない控除対象外消費税問題に関しては、今回の上乗せ項目及び率に関する妥当性の早期の検証、および消費税率10%引き上げ時の抜本的解決を強く望みたい。 我が国の医療制度の根幹をなす国民皆保険制度を取り巻く環境は、危機的な状況にある。我々は、将来にわたり我が国の医療制度を維持、発展させるために、政府に以下の点を要望する。
記
一、国家戦略特区における過度な規制緩和、医学部新設反対
一、国民の生命・健康を損ない、混合診療拡大に繋がる患者申出療養制度(仮称)導入反対
、地域の実情に応じた医療提供体制の再編
一、国民皆保険制度を形骸化させるTPP条約批准反対
一、控除対象外消費税問題に関する診療報酬上乗せ対応についての速やかな結果検証とその抜本的解決
一、公的医療保険による国民皆保険制度の堅持
以上、決議する。
平成26年9月14日
近畿医師会連合定時委員総会