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医師・医療関係者のみなさまへ
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勤務医の窓
府医ニュース
2014年9月17日 第2724号
北摂の地から一脳神経外科医として、また、一病院管理の仕事を併せてする者として、普段思うところを少しばかり書かせていただきます。近頃、ショッキング、でもやはりという内容の発表がありました。それは5月13日付の米・Circulation誌の附属誌に発表されたもので、九州大学・国立循環器病研究センターの調査です。
日本の脳卒中専門医の約4割が、長時間労働や睡眠不足などで離人症を伴い「燃え尽き症候群」に陥っているというものです。これは約2割とされる一般市民と比べると、2倍近い割合となっています。調査回答者の41.1%が、燃え尽き症候群に該当し、20%以上が重症と認定されています。もっとも米国の神経外科医でも4割程度に「燃え尽き症候群の疑いがある」とされており、日本だけの状況とは言えません。
このリスクとして第一に長時間労働があり、週当たり労働時間が10時間増えると、12%増加する傾向にあります。長時間になると「燃え尽き症候群」の該当者は60%を超えており、患者数増加も大きな拍車を掛けています。「燃え尽き症候群」は、職務への献身的な努力が報われないことが主な原因で、疲労感や離人症を伴い、医療過誤や退職につながることが指摘されています。論文では「睡眠時間や休日の増加と労働時間の短縮を進めることで、燃え尽き症候群を減らし、医師不足を解消することにつなげることができると期待される」としています。
問題は時間だけでしょうか? 医師の資質も重大な要件でしょう。一方、患者サイドの医療への期待・結果を求める要求は現場医師の困惑につながっています。医療過誤を恐れるあまり、立ち去り型や職場内サボタージュも問題となるでしょう。あらゆるマニュアルやパスもリスクを抑えるものの、上っ面だけの対応にもつながりかねず信頼関係の欠如が別の問題を引き起こしかねません。
医療制度もしかりです。医療の質を担保するためにやむを得ないとしても、患者が転々と移動し細切れ医療になっている現実があります。私どものような市中の中小病院は、患者サイド・地元市町村の思惑などと医療制度との中で生き残りをかけて喘いでいるようです。制度の改革改定が次々と行われていくわけですが、ことは命の問題であり財政だけの問題ではありません。法治、制度の前に人の道であり非道はもってのほかです。
日本が最高の医療水準の国であり続けてほしい一面、生命に限界がある以上、満足の医療・納得の医療が常に行われる国であってほしいと思います。
本当の毎日の現実はそんな大上段に構えた問題よりも些細な、しかし深刻な事案の連続です。
吾が身、振り返って白衣を着ているものの果たしてホワイトカラーと言えるだろうか?術衣が青色なのは皮肉だろうか? やはり燃え尽きのひとりになっているようです。
我家の家訓に「虚静恬淡」というのがあります。お盆にこの文章を書いておりますが、ご先祖様には申し訳ない日々が続きます。駄文にお付き合いいただき感謝いたします。
北大阪警察病院 副院長 越前 直樹 ――1260