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時事
府医ニュース
2014年9月3日 第2723号
8月20日、厚生労働省「がん患者・経験者の就労支援のあり方に関する検討会」の報告書「『らしく、働く』~仕事と治療の調和に向けて~」が公表された。この検討会は、がん医療の進歩とともに、日本の全がんの5年相対生存率が57%に達し、平成24年閣議決定のがん対策推進基本計画において、全体目標に「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」が加えられたことを踏まえ、今年2月に立ち上げられたものである(座長は堀田知光氏:国立がん研究センター理事長)。
日本人が生涯でがんにかかる可能性は、男性が約60%、女性が約45%であり、国民の2人に1人ががんを経験する時代となった。一方で、がんに罹患した勤労者の約30%が依願退職、約4%が解雇となり、自営業等の約13%が廃業したとの報告がある。
検討会では、ステークホルダーごとに、就労に関するニーズ・課題の整理が行われた。(1)「がん患者・経験者とその家族」では、身体的・心理的・社会経済的問題、病状等の説明が受けにくい、相談先がわからない、職場に病状を伝えにくい、(2)「医療機関」については、就労ニーズの把握や就労継続を意識した説明が不十分、就労支援に関する知識や技量、職場との情報共有が不十分、(3)「企業」においては、私傷病であるため手厚い対応が難しい、相談体制、情報が不十分、病状の把握が難しい、経営的な負担がある――となっている。
更に「国民の認識」も課題に挙げ、例えば、乳がんの5年生存率は現在約9割に達しているのに対し、多くの国民が40~50%と思っており、「稀に起こる病気で治りにくい」との誤解が、がん患者の就労の可能性が実際より低く評価される一因としている。
そして、解決のために4つの主体を取り上げ、取り組むべきことを掲げた。すなわち、①「がん患者・経験者とその家族」では、病状を理解し自分ができることや配慮して欲しいことを明確に伝えること、②「がん診療連携拠点病院」では、今すぐに仕事を辞める必要はないと伝える取り組みとして、社会保険労務士等の専門家と連携した相談対応、土曜・休日診療の試行、患者会との連携、③「企業」においては、がん患者と主治医と産業医・保健師等が連携した病状や配慮事項の共有、地域産業保健センターと連携した相談支援、④「ハローワーク」等に対しては、就職支援モデル事業の拡充、ノウハウや知見の共有、就職支援メニューや産業保健総合支援センターの活用推進などである。
なお、小児がん経験者については、成人発症とは異なる面があることから、その特性を踏まえた検討が別に行われている。
さて近年、「キャンサー・サバイバーシップ」という概念が普及しつつある。〝がんとともに生きる〟時代となり、がんになっても自分らしく安心して暮らせるための支援は就労に留まらない。食事、運動、結婚、性生活、妊娠・出産、子育てや介護など、様々なサポートが今後整備される必要がある。(学)