
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
本日休診
府医ニュース
2014年8月27日 第2722号
高齢者向け住宅等を対象とするヘルスケアリートの活用に係るガイドライン(7月から適用)が国土交通省から公表された。米国で誕生したリート(Real Estate Investment Trust/REIT)という仕組みと基本的には同じ。リートとは、株式市場で集めた資金で、住居や施設、オフィスビルを購入し、運営や売買を行うというもの。つまり、ヘルスケアリートとは、ヘルスケア施設(サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホーム、認知症高齢者グループホーム)の不動産投資信託(リート)である。
市場から得た資金を用いるということは、結果として、高齢者施設を長期管理しながら運営利益を投資家に分配することになる。よって、投資家が不動産投資法人を通じて、運営や方針に対し意見を反映させることができる。ガイドラインには、利用者とされるヘルスケア施設入居者の保護も配慮事項として存在する。しかし、保護する対象は利用者だけで良いのだろうか。民間議員という人達が、国に対して労働条件(低賃金、長期労働)の規制緩和を求める中、施設従業員の不利益や、法人の利益追求のために過剰な介護保険制度の利用につながることはないか。私は、利用者獲得のために「理想の最期は施設で」というCMや政策誘導がなされ、国民の死生観、在宅医療や看取りの風景、そして、日本の在り方も変えてしまうのではないかと強い危惧を持っている。
国交省のヘルスケアリート関連資料では、今後「病院に対しても別途検討する」とある。かつて規制改革会議が主導したPFI方式について、「どんな分野でも民間がやれば赤字になり難い」という考え(新自由主義)が根底にあった。ヘルスケアリートはPFIと異なる部分もあるが、公的分野の民間開放である点では同じ。民間開放がすべてダメというわけではない。ただ過激な「公から民へ」の流れは、投資者保護のために、本来保護されるべき高齢者と、地域の医療や介護の現場にいる我々をより一層苦しめていくことにつながらないだろうか。私は諸手を挙げて賛成できない。(真)