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府医ニュース
2014年6月18日 第2715号
「若い世代の内向き志向を克服」「国際的な産業競争力の向上」と「グローバルな舞台に積極的に挑戦し活躍できる人材の育成」を推進するために「大学教育の改革」が必要である――新自由主義を信奉される方のご意見ではなく、文部科学省のスーパーグローバル(SG)大学等事業のページからの一部引用である。本年4月に、国公私立大学長宛にSG大学の公募通知がされている。医療の「改革」が粛々と進んでいることを一般人があまり知らないことと同じく、教育の現場においてグローバルの上に〝スーパー〟まで付けてこんなことになっているなんて露とも知らなかった。応募要件の一部として、「教員に占める外国人、および外国の大学で学位取得した専任教員の割合」「意思決定機関などへの外国人の参画」「国際通用性を見据えた(教職員の)人事評価制度の導入」という、明治維新後、日本人による教育を目指したのとまるで逆な改革内容が書かれている。
教育のグローバリズムに賛成の医療関係者もいるだろう。ただ、私は教育現場の過剰(スーパー)なグローバリズムは危険と考えるのだ。総合大学がSG化すれば、医学部人事も当然そのような内容に変わりうる可能性がある。
明治政府に迎えられたドイツ人医師、エルヴィン・フォン・ベルツ。約30年の滞日中、彼は当時の日本人が維新の名の下、新しい文明を取り入れることには理解するも、伝統ある文化を日本人自ら「我々は野蛮でした」と卑下することは良しとしなかった。そして、次の言葉を残した。「もし日本人が現在アメリカの新聞を読んでいて、しかもあちらのすべてを真似ようというのであれば、その時は、日本よさようならである」。
外国語教育を否定するわけではない。ただ、過剰な文明と、他国の文化を無条件に取り入れることは、我々の思考回路も変えてしまい、文化(=教養)の低下をもたらす。文明と文化は互いに影響することはあっても一致しないのである。過剰なグローバリズムで、医学の発展はするも、医療の荒廃をもたらす可能性を感じる読者がいてくれれば幸いである。(真)