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時事
府医ニュース
2014年6月18日 第2715号
厚生労働省は病院で使われる医療用検査薬を薬局やドラッグストアで買えるよう進めている。不妊治療などに使われる排卵日検査薬、大腸がんに対する便潜血検査薬を2015年にも認める。医療用検査薬を家庭向けに市販化するのは、1992年の妊娠検査薬以来で、病気の早期発見と医療費抑制が目標とのことである。
現在、医療用検査薬を入手するには医師の処方箋が必要だが、処方箋なしで個人が薬局やドラッグストアで買えるようにする。厚労省は6月4日に薬局を含む医療関係者、消費者代表などが参加する審議会を開き、検討作業に着手した。
対象として最も有力なのは排卵日検査薬で、尿中の黄体形成ホルモンの変化を調べて排卵日を予測し、不妊症の夫婦が、妊娠しやすい日を把握することが容易になるという。
大腸がんに対する便潜血検査薬も候補になっており、陽性であれば精密検査を受けるきっかけになるとのことだが、陰性であっても大腸がんを否定することはできないので、医師の指導が必要である。検査結果が陰性の場合にはかえって手遅れにつながる可能性が危惧される。
薬局などで気軽に買える検査薬が増えれば、需要が拡大し、製薬各社の収益につながるため、市販化対象を増やすよう求めているのが現状である。
検査薬を家庭で使いやすくする背景には、一人ひとりが自分の健康を管理する「セルフメディケーション」を普及させる狙いもある。病気を早期に発見すれば、重症化を防ぐことができ、結果的に医療費の抑制につながるとの考えであるが、正しく用いて、正確に理解しなければ、結果を盲信して、手遅れになる可能性もある。
政府の規制改革会議は49種類の医療用検査薬の市販化を提案している。生活習慣病に関連する検査として、血糖、グリコヘモグロビンA1c、アルブミン、インスリン、血中脂質、尿酸等、健康状態を知るための検査として便潜血、前立腺特異抗原、尿検査、インフルエンザウイルス抗原、ヘリコバクターピロリ抗原、淋菌抗原、クラミジア抗原、クレアチニン、尿素窒素、AST、ALT等の肝機能検査、更には服用している薬剤の影響(副作用)を知るための検査として、白血球、赤血球等7項目を含む内容である。
日本医師会は誤診とそれによる手遅れなどを防ぐため、医療知識の乏しい人でも判断しやすい検査薬に限定するよう主張しているとのことであるが、臨床検査医学の専門家等による検討を行い、問題点を整理して、医療費抑制を主目的とした市販化の拡大に歯止めをかけるべきである。(中)