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時の話題

医療・介護総合確保推進法案

府医ニュース

2014年6月4日 第2714号

国民不在の審議であり 拙速に進めるべきではない

 医療・介護総合確保推進法案(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法案)が5月15日、衆議院本会議で与党の賛成多数により可決され、参議院に送られた。引き続き、参議院の審議を経て今国会で成立する見通しとなっている。法案は高齢化とともに膨らみ続ける社会保障費を抑制し、団塊世代のすべてが75歳以上となる2025年を見据えて持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進を具体化する内容である。
 そのための措置として、効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに、地域包括ケアシステムの構築を通じ地域における医療および介護の総合的な確保を推進するため、医療法や介護保険法等の関係法律について所要の整備等が行われる。その内容は多岐にわたり、19もの法案が盛り込まれているが、政府は今国会で一括審議して会期内での成立を目指している。
 具体的には、(1)新たに消費増税分から904億円の基金を創設し、医療・介護の連携強化を行う(地域介護施設整備促進法等関係)、(2)都道府県単位での病床機能報告制度と地域医療構想の策定などにより地域における効率的かつ効果的な医療提供体制を確保する(医療法関係)、(3)地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化(介護保険法関係)、(4)その他①診療の補助のうちの特定行為を明確化し、それを手順書により行う看護師の研修制度を新設する、②医療事故に係る調査の仕組みを位置づける、③医療法人社団と医療法人財団の合併、持ち分なし医療法人への移行促進策を措置する、④介護人材確保対策の検討(介護福祉士の資格取得方法見直しの施行時期を平成27年度から28年度に延期)――などである。医療法関係は26年10月以降、介護保険法関係は27年4月以降の実施を図る。
 病床機能報告制度では、地域の病床が都道府県により管理され、病床の再編・削減が行われる。また、指定された研修を受けた看護師による特定行為については気管挿管などの危険な医行為が含まれており、その責任の所在も不明確である。更に介護関連では介護予防の通所・訪問介護が保険給付から市町村事業に移管される。特養入所は原則、要介護3以上に限定され、一定以上の所得がある利用者からは2割の利用者負担を求める。
 消費増税の目的は社会保障の充実であったはずであるが、これらの施策は社会保障費削減を目的としたもので、医療・介護の質の低下を招きかねない。国民への説明はもちろん、国民の十分な理解なく拙速に進めるべきではない。

医療保険制度改革 論議の動向

 社会保障制度改革推進法が施行(平成24年8月)され、25年8月には同法に規定された国民会議が報告書を公表。同法では、国民会議の審議結果等を踏まえ1年以内に必要な法制上の措置を講ずることが規定されており、同年12月、「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」(プログラム法)が成立した。プログラム法には、少子化対策・医療制度・介護保険制度・公的年金制度に関する改革の検討項目および実施時期・関連法案の国会提出時期のめどを明示。このうち、医療制度の検討項目では、①病床機能報告制度の創設・地域の医療提供体制構想の策定等による病床機能の分化および連携、②国保の保険者・運営等の在り方の改革、③後期高齢者支援金の全面総報酬割、④70~74歳の患者負担・高額療養費の見直し、⑤難病対策――などが列挙。関連法案の提出時期は、医療サービス等提供体制や介護保険が26年中、医療保険が27年の通常国会と予定されている。
 厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会の分科会のうち、健康保険法等関連事項を審議する医療保険部会(遠藤久夫部会長)は4月21日、大病院外来での定額自己負担、在宅医療との公平性の観点から入院時食事療養・生活療養費の見直し、高齢者医療の費用負担、後期高齢者支援金負担の総報酬割、保険給付の対象範囲の適正化――の討議を確認。5月19日には後期高齢者支援金の負担に関して、厚労省側から現役世代の負担増となる全面総報酬制の導入の賛否が問われた(後期高齢者医療制度では現役世代からの支援金と公費で9割を賄う仕組み。現行の支援金は被用者保険者間負担割合が総報酬制3分の1と加入者割按分)。