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時事

日経新聞「健康保険料最高の8.8%」報道

府医ニュース

2014年5月21日 第2712号

医療制度の抜本改正待ったなし

 4月15日付の日本経済新聞1面トップは、「健康保険料最高の8.8%――14年度大企業の4割上げ」の見出しで、「負担増、競争力の足かせに」の小見出しを付けて大きく報じた。2011年4月20日の日経新聞1面トップを思い出させる紙面において、健康保険組合が相次いで保険料を引き上げており、保険料率は14年度に平均8.8%となり、過去最高を更新する。高齢者医療制度への支援金の増加が原因で、今後も企業負担は増える見通しであり、企業の競争力強化を通じた経済再生にも悪影響が出かねないと伝えた。また、海外企業が対日投資に尻込みする要因にもなっているとも報じた。
 全国に約1400ある大企業の健康保険組合のうち、14年度は4割弱の500前後が保険料率上げに踏み切る。13年度の全組合の平均保険料率は8.6%で、14年度は0.2%上昇する。日経紙面に採用された大企業各社の健康保険料率はベネッセグループの7.875%、損害保険ジャパンと日本IBMの8.0%、KDDIの8.2%、三菱電機の8.3%が平均以下で、平均以上の企業は東京ガスの8.8%、JRグループ、ニコンの9.0%、サッポロビールの9.4%、味の素の9.6%であり、13年度比上昇幅はサッポロビールの0%から東京ガスの1.0%である。
 一方、医療法人を含む中小企業の従業員や家族が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険料率は長野県の9.85%が最低であり、味の素の9.6%より高く、最高は佐賀県の10.16%である。
 10%以上の保険料率の道府県は大阪府(10.06%)を含めて26自治体に及び、近畿2府4県のうち滋賀県(9.97%)と京都府(9.98%)以外は10%以上である。大企業より財政基盤や競争力の弱い中小企業の方が負担が高くなっているのが現状である。
 75歳以上の医療費の約4割を現役世代からの「仕送り」で賄う仕組みの後期高齢者医療制度への支援金は約6兆円になり、各健康保険団体の負担となっている。国民健康保険が2.1兆円、協会けんぽが1.8兆円、健康保険組合などが2.2兆円を支援している。すなわち、支援金は健康保険組合のみが拠出しているわけではなく、協会けんぽの支出のうち、約4割は高齢者医療制度への支援金である。高齢者の増加で支援金は増加の一途をたどっており、協会けんぽや健康保険組合等の保険料で高齢者医療を支え続けることは困難である。高齢者医療制度の抜本改正を急ぐべきである。(中)