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府医ニュース

2014年5月7日 第2711号

◆豊岡市から放鳥されたコウノトリの1羽が初めて海を渡り韓国で確認された。長年、野生復帰に取り組んできた関係者にとって、有意義な出来事である。
◆コウノトリは極東に分布し、日本でも、江戸時代までは至るところで生息していた。大阪の池島・福万寺遺跡の水田跡では、コウノトリの足跡が見つかり、かつては弥生時代から人とコウノトリが共生していたこともわかっている。しかし、近年の狩猟や環境破壊により、1971年ついに日本の野生のコウノトリは絶滅した。
◆野生復帰プロジェクトでは、単にコウノトリが棲める豊かな自然を取り戻すだけではなく、コウノトリを人里の暮らしに受け入れる「大らかな文化」を創造することが必要であるという。その意味で、今回のコウノトリの分散は、共生が拡がる象徴でもある。
◆コウノトリにとって、極東を行き来することに国境はない。ただ、人と共生できる場所を求めているのだ。今、戦争責任ばかりを問う地域の人間様にも、未来に向けて共生できる創造性はないものなのか。(誠)