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第2回在宅医療推進モデル事業報告会

府医ニュース

2014年4月30日 第2710号

在宅医療の底上げ図る

 大阪府医師会在宅医療円滑化ネットワーク検討協議会(黒田研二協議会長/府医介護・高齢者福祉委員会委員長)では、事業年度2年目が終了するにあたり、3月29日午後、府医会館で、平成25年度の「大阪府転退院調整・在宅医療円滑化ネットワークモデル事業」である19事業の報告会を開催した。

多職種協働による地域づくりを推進

 大阪府医師会は、治療段階に応じた適切な医療を提供するため、医療関係者や地域の多職種との幅広いネットワークの形成と、円滑な転退院を行う仕組みづくりを推進するため、平成24年8月、会内に在宅医療円滑化ネットワーク検討協議会を立ち上げ、年度中に郡市区医師会等が実施する転退院や地域の多職種連携に関する取り組みを支援してきた。 25年度分の活動を発表する第2回報告会は、中尾正俊理事が進行。冒頭、茂松茂人副会長は、いわゆる2025年問題に対し、高齢者が安心安全に暮らせる環境づくりへの方策として、府医が24年度から実施している在宅医療円滑化を目指す事業を振り返った。一方で、入院医療を要する患者にも配慮が必要であり、在宅と入院医療のバランスを考え、事業を展開したいとした。
 引き続き、モデル事業の内容から、①地域医療連携室やコーディネーターを設置した多職種協働と強化型在宅支援診療所(8事業者)、②多職種連携・医療機関連携(11事業者)――の2分科会で活動内容が報告された。
 約2時間に及ぶ分科会の後、中村正廣・黒田研二両座長が討議概要を総括。黒田座長が全体を振り返り、これまでの協議会の取り組みによって、「より在宅医療の基盤づくりの進展を実感した」と総評した。更に、26年度の「大阪府在宅医療連携拠点支援事業」に言及。改正介護保険法に基づき、市町村による包括的支援事業の展開が求められることから、医師会・医療関係者が市町村と協力し、地域包括ケア推進のイニシアチブをとることが重要であると指摘した。また、中尾理事は、在宅医療の展開による医師会活動の強化を図りつつ、まとまりのある会員組織として発展するよう期待したいと語った。

26年度補助対象事業者を決定
24時間365日の在宅医療・介護提供を模索

 平成26年度大阪府在宅医療連携拠点支援事業の事業者が決定された。4月9日に大阪府医師会在宅医療ネットワーク検討協議会を改称した「府医在宅医療ネットワーク支援会議」で協議され、16日の府医理事会に報告された。
 26年度の在宅医療連携に関する事業は、市町村との連携を必須とし、研修の実施、会議の開催、地域の医療・福祉資源の把握および活用――の諸事業を展開する「拠点整備事業」と、これらに加えて、地域住民への普及・啓発、地域包括支援センター・ケアマネジャー対象の支援、情報共有、24時間365日の在宅医療・介護提供体制の構築に向けた検討――を行う「拠点推進事業」の2事業。支援会議では、両事業への応募内容が精査され、その結果が府医理事会に報告された。採択された医師会などの事業者は次のとおり。
 拠点整備事業(12事業者)=茨木市、摂津市、枚方市、大東四條畷、柏原市、羽曳野市、貝塚市、和泉市、高石市、福島区、港区、住吉区――各医師会
 拠点推進事業(26事業者)=豊中市、箕面市、高槻市、守口市、門真市、東大阪(布施・河内・枚岡)、富田林、河内長野市、松原市、大阪狭山市、堺市、岸和田市、泉大津市、泉佐野泉南、北区、都島区、東淀川区、旭区、大正区、浪速区、生野区、城東区、東住吉区、平野区――各医師会および市立池田病院、大阪府看護協会

座長総括
【第1分科会】地域医療連携室の設置・運営 連携の「要」に

 患者とかかりつけ医の関係から、広域合同型・地域密着型・都市部特有型の地域性を踏まえた報告があった。医師会地域医療連携室の運営は、在宅医療をスムーズに進行するための到達目標でもある。しかし、人的確保と資金力が必要なこと、医療関係者や市民の認知度の低さが課題として浮かび上がった。多職種からは連携へのニーズが高かった。医師は会合設定に労力を費やしており、コーディネート役は地域包括支援センター・行政に担ってもらいたい。顔を合わせる会合は重要であり、医師は手応えを感じている。また、様々な形式で医療資源の公開・共有が進んだことも報告された。事業成果が見えつつあるが、全体的に在宅医療の充実という側面では効果は限定的である。会員間の在宅医療への温度差を懸念する。
 ネットワーク事業の推進に、医師が地域の多職種との連携に慣れていくことが求められる。地域医療連携室という「要」に意味を持たせて人員配置する体制づくりを、ひとつのアイデアとして推進してほしい。

【第2分科会】多職種連携 医介連携を重層化

 在宅医療を進めるための3要素として、①患者個人への医療・介護支援、②地域レベルのネットワークづくり(地域包括ケア)、③地域住民の理解――が挙げられる。 患者レベルでは医師会内部の地域医療連携室(医療相談室)によるコーディネートや、会員間メーリングリストを活用し主治医を探す実状が報告された。更に、ICTを活用した医療情報の共有、広く多職種連携を進めるための研修会や、職種を限定し、事例検討を深めるための会合の実施、医療資源調査の実施と公開、看取りを進めるための在宅死亡の実態把握、小学校区別の研修会や医師による地域包括支援センター単位の相談応需体制などの活動報告があった。
 これらは3要素の充実に資する報告である。地域医療の連携と介護の連携を、いかに重層的に構築するかが今後の課題と考える。

在宅医療推進モデル事業 第1・2分科会報告
守口市医師会在宅医療推進ネットワーク事業
守口市医師会 森口久子氏

 地域医療連携室を設置。医療資源の調査を基に医療機関名簿・マップを作成し、医療と介護の連携の準備が整った。また、認知症相談に関するアンケートを実施した。在宅医療の推進に向け、病院・診療所間の連携について懇談会等を開催した。多職種連携の研修会やグループワークにより、各職種間の関係が深まった。行政とは「医療と福祉の連携会議」をはじめ、各会合や事例報告会、市民向け公開講座の開催を通じて、更なる協力体制を築いた。
 地域医療連携室の設置により、他団体との関係が強化できた。同室の周知や、同室が医療・介護の連携にどのようにかかわっていけるかが課題として浮かんだ。これらを克服し、より良い在宅医療の展開に努めたい。

東大阪在宅チーム医療推進事業
東大阪3医師会(布施・河内・枚岡)

 在宅医療の対応を「点」から「面」に展開すべく、医師会内に地域医療連携委員会・地域医療連携室を設置。
 事業遂行にあたり、事業協力団体とともに7委員会を構成した。
 「医療マップ」病院編を作成し、在宅・介護施設からの後送病院への救急搬送システム、在宅医療・介護カードの様式などを提案した。また、枚岡医師会「在宅医療推進ハンドブック」が完成し、布施・河内と併せ3医師会の在宅関係冊子が揃った。多職種参加による講演会や研修会のほか、認知症や孤独死をテーマにした市民向けシンポジウム等を開催。今後も急変時における在宅医と後送病院の緊密な連携体制、多職種との更なる協力関係の構築に努めるとともに、市民・ボランティアとの協働も検討したい。

強化型在宅療養支援診療所・病院連携
富田林医師会 坂口隆啓氏

 平成24年4月の診療報酬改定において「強化型在宅療養支援診療所・病院」の評価が創設され、医師会主導により18医療機関が届け出(現在は19医療機関)。これに伴い、強化型在支診・病院連携システムを立ち上げた。地域を3グループに分けて展開し、緊急時や看取りに対応し、在宅医が相互をカバーする形ができた。毎月のケースカンファレンスや、在宅医療の推進のための多職種連携研修会を開催した。
 各グループとも、病院・診療所、訪問看護ステーションやケアマネジャーとの連携が促進された。また、医師会にネットワークサーバーを設置し、iPadを医師、医師会、訪問看護ステーションが持ち、情報共有がスピーディーになった。今後も更なる環境整備に努める。

河内長野市医師会在宅医療ネットワーク事業
河内長野市医師会 土生裕史氏

 医師会内に地域医療連携室を設置し、機能強化に向けて事業を展開した。医療機関ごとの在宅医療情報(在宅医療カード)の作成や関係病院への情報提供により、地域医療連携室への相談件数が増加。在宅医紹介システムを構築し、退院から在宅への移行がスムーズになった。また、訪問看護ステーション、ケアマネジャーとの連絡会や研修会等を開催。多職種連携研修会の開催後には、報告書作成の要望が多く寄せられ、関係団体に送付した。引き続き、三師会・行政・介護をつなぐ活動を展開したい。
 地域医療連携室は、医療・介護・福祉を総括する部署として潤滑油となり機能し始めている。マンパワーの充実や地域住民への働きかけも行いたいと考えている。

大阪狭山市医師会地域医療ネットワーク事業
大阪狭山市医師会 渥美正彦氏

 地域医療連携室が主導し、会員および協力機関と事業を行った。入退院・在宅医療への相談では、医療機関よりも地域住民からの個別相談が大半を占めたが、相談件数は少数であった。ホームページのリニューアルに際し、認知度向上に努めるとともに、相談件数増加に向けた対応として、病院内地域医療連携室との協力やシステム化を検討したい。
 多職種参加による地域医療ネットワーク交流会では、同市の医療連携の歴史と将来像など、地域に密着した内容を展開したほか、地域リーダー養成研修会を開催。また、「医療・介護便利手帳」の改訂版を作成。イラストを多用し、分かりやすい内容にするよう努めた。今後も在宅医療拠点支援事業を視野に事業を展開していく。

北区在宅医療円滑化ネットワーク事業(在宅医療コーディネーターの育成に向けて)
北区医師会 米田 円氏

 在宅医療円滑化ネットワーク委員会を定期開催し、事例報告や転退院調整の課題抽出、今後の事業方針などを検討。多職種による研修会や区民向け啓発事業を展開したほか、会員に在宅医療に関するアンケートを実施した。都市部医師会という地域事情もあり、在宅医療への協働意欲に差異がある現状を把握した。
 複合的ケアを要する患者の場合、退院調整が円滑に運ばないケースが散見される。こうした課題に包括的に対応すべく、医療・介護を提供する機関によるネットワーク構築と、それをまとめる在宅医療コーディネーターの人材育成を行った。コーディネーターの設置により、在宅への移行がスムーズになり、病院関係者や行政との多様な意見・情報交換も可能となった。

東住吉区在宅医療ネットワーク事業――病院から在宅・施設での看取りを目指して
東住吉区医師会 北島弘之氏

 病院から在宅・施設での看取りを目指し、病診連携や医療・介護連携に取り組んだ。連絡会、講演会、研修会、情報交換会を行い、多職種による顔の見える関係の構築に努めた。専門職と一般住民によるワールドカフェ(討論)では、住民が専門職に親近感を持つなど、有効であった。その他、在宅医療機関情報冊子を作成。これを活用し、医師会内に地域医療連携室を設置し、病院の地域医療連携室や介護・福祉職に在宅医療診療所の情報を提供していく。また、区民が閲覧し参考にできるようなシステムを検討したい。
 今後は歯科医師会・薬剤師会にも参画願い、三師会が中心となって連携強化を図りたい。多職種間の関係構築と区民との交流に引き続き努める。

平野区在宅医療円滑化ネットワーク事業(Ⅱ)
平野区医師会 酒井泰征氏

 「在宅医療・施設マップ」の普及を目指し、多職種連携研修会を実施。区職員の参加者も増加した。在宅医療ケアネットワーク委員会では、地域連携や連携シートなどを検討。その他、重症認知症や末期がんなどの在宅医療への対応も協議した。また、サービス付き高齢者向け住宅の急増に伴い、緊急対応の問題点なども浮上した。
 メーリングリストを活用した「かかりつけ医相談」の改善・調整は、個人情報の観点から実現に至らず、医師会内のコーディネーター配置は、費用対効果の面で困難であった。今後は、在宅医療を行う医療機関を増やすための講演会、病院と診療所間の患者搬送に関する会議のほか、多職種連携に関する研修会についても引き続き開催する。

門真市域在宅医療推進協議会による在宅医療に関する環境整備事業
門真市医師会 外山 学氏

 門真市医師会員には、伝統的に看取りを含む在宅医療を実施する素地がある。この度、更なる充実を図り「開業医がひと肌脱ぎやすい環境」を整備するため、多職種連携の研修ほか事業を実施した。具体的には、①地域資源の情報公開・共有を図るため「医療・介護資源集」冊子の改訂および携帯版の作成・配布、②希望者居宅の冷蔵庫内に常備された救急医療情報キット「命のバトン」の積極活用・拡大と、外出先での急変時にも意思表示できるための準備策、③地域医療連携室は看護職が配置され機能を発揮することから、退院支援システムの運営には門真市訪問看護ステーション連絡会と提携、④「門真だよ!全員集合」と題する市民向け研修会で、サービス付き高齢者向け住宅の実態を紹介――などである。

在宅医療推進・多職種連携強化事業
堺市医師会 前川たかし氏

 堺市における医療と介護の連携を進める関係者会議(いいともネットさかい)および堺地域医療と介護の連携強化病院連絡協議会(C・Cネット)による、各区単位に多職種協働のための事例検討会や医療講演会、病院勤務医・事務担当者向けの主治医意見書作成研修会、ケアマネジャー向けの病院研修――などの事業を展開した。いいともネットさかいでは、「多職種連携のためのマニュアル」を作成し、近くホームページでも公開を予定している。事例検討会のコーディネートは各区の地域包括支援センター職員がファシリテーターの練習を重ねた上、事例を選定して進めている。徐々に医師の参加も増え、一度出席した会員のリピート参加もあった。

医師会在宅地域医療連携室の設置による多職種連携の推進と住民への啓発活動による適切な在宅医療の普及と透明性の推進
岸和田市医師会 出水 明氏

 岸和田市医師会員による在宅医療活動は充実しているが、在宅患者増に十分対応できるとは言えない。そこで、医療資源情報の公開に向けた調査実施をはじめ、会内に在宅医療地域連携室を設置し、関係機関や多職種連携の窓口とした。また、住民啓発や医療・介護連携の研修会開催および在宅医療・介護を応援するポータルサイト(アットホームきしわだ)を立ち上げて情報をタイムラグなく公開し、市民ニーズに応えている。在宅医療管理下にありながら検案に至った事例の割合が48%あった。終末期医療の活動に資するよう、事例を検証したい。また、会員には在宅医療への参入支援のためのプログラムを作成している。老人ホームにおける看取りは嘱託医が対応する時代になったと感じている。

医師会を拠点とした在宅医療推進事業
泉大津市医師会 真嶋敏光氏

 泉大津市医師会は、医療介護連携の会(イカロスネット)を運営しており、会合開催日を固定化して会員の参加を促した。また、クラウドを利用した在宅医療連携情報共有システム(カナミックネットワーク)を導入。事前に了解が得られた患者の情報を共有し、70事例の検討に役立てた。事業所間でICT活用の較差があるが、患家の手書きによる連携用ノート内容を撮影して画像化後、共有することも有用であった。市民啓発事業「あたまいきいき講座」に対する参加者の評判は良好であった。医療介護資源集の作成には門真市医師会の資料を参考に作成した。更新内容はホームページ上で周知している。今後、在宅医療は「顔の見える関係」から「無理の言い合える関係」へと発展を目指したい。

都島区転退院調整・在宅医療円滑化ネットワーク事業
都島区医師会 船内武司氏

 都島区医師会訪問看護ステーション内に在宅医療を推進するための専任職員(看護師)を配置した。在宅医療推進に関する協議組織を結成したことで、相互の連携が深まったことは意義深い。在宅医療関係者・実務者講習会では、区内高齢者を取り巻く状況を共有し、訪問看護の視点から地域連携、同区歯科医師会の協力を得てがん患者の口腔衛生管理の研修、更には多職種によるグループワークを通じた関係者間の交流を進めた。区民向けの講演会では近隣医師会の取り組み事例を参考に地域づくりの一助とするとともに、会員への在宅医療への対応内容を調査・集約した。
 基幹病院に向けて、転退院時のワンストップサービスの利便性を更に周知して認識願い、患者紹介数の増加を図りたい。

東淀川区医師会在宅医療多職種連携事業
東淀川区医師会 岡部登志男氏

 情報共通・在宅医療連携システム(EIR)による活用については、事業を立ち上げる前の約2年間に対象者を限定して利用し、セキュリティー面を確認した。医師・看護師、患者、介護職、薬局・薬剤師がシステムに入力。患家に備え付けてある連携用ノートに手書きされた内容は画像化後、共有が可能となった。区内の多職種連携は「こぶしネット」に集い、学術・企画、啓発、社会資源、連携ツール・パスの4ワーキンググループで協議されている。多職種連携の阻害要因を調査した結果、情報を共有する機会の少なさ、職種間での問題意識の相違、まとめ役となる人材の不在――などが挙げられた。小学校区ごとの地域住民向け学習会を開催したほか、医師会内に在宅医療相談室を設置した。

転退院調整・在宅医療円滑化ネットワーク事業
旭区医師会 井口和彦氏

 旭区医師会は介護保険制度施行前より、地域における在宅医療・介護サービスの連携に努めてきた。多職種連携のための定期的な会合(区全体、地域包括支援センター単位)に医師が参画しているほか、小学校区ごとに区民向け研修会を開催、今期は区内および近隣の基幹病院と協議し、病診連携の充実を図った。
 一方、当医師会のA会員全員を対象に、在宅医療の実施可否や在宅看取り件数などを調査・集計し、地域の在宅医療提供の状況を把握した。今後、病院や介護施設などからの紹介増加への対応が課題である。更にかかりつけ医は自院通院中の患者からの初回の往診依頼に応えるとともに、患者・家族と相談の上、医師会相談窓口で在宅医を決めるよう要請している。

トータル医療ネットワーク
大正区医師会 樫原秀一氏

 二次医療圏を基盤とする「トータル医療ネットワーク」を構築し、広域で入退院時の困難件数の減少を目指している。地域住民の受診行動に鑑み、近隣区の医療施設を交えたエリア設定が現実的である。在宅医間のメーリングリストを用いた情報の共有・交換や相互サポートが可能となり、在宅医療そのもののレベルアップと、医師の負担軽減を図ることができた。医師会窓口に対して、地域での主治医を探す相談申し入れは徐々に増えている。会合は医療圏の枠組みに複数の地区が同時に集まり、顔を合わせることで、地区外の病院と在宅医・訪問看護ステーション・介護事業所の連携が進む。地区単位の事例検討会などには、行政や地域包括支援センター、訪問看護ステーションが参画している。

ブルーカード在宅プロジェクト――ブルーカードシステムと在宅医療ネットワークを融合した在宅医療の提供
浪速区医師会 金田高次氏

 浪速区医師会ではブルーカードシステムにより、急変の可能性がある在宅療養中の患者情報を事前に登録し、緊急搬送時に活用している。これに、病院・診療所・介護関連施設をFAXで結ぶシステム(在宅医療ネットワーク)を連動させている。同時に、介護関連情報も盛り込み、クラウド上で情報の共有化を図る。この結果、緊急入院から退院・在宅医療までを一連の連携の下でつなげることが可能となった。行政が発行し独居高齢者が緊急時に備えて所持している「そなえカード」が「ブルーカード」に集約される方向にある。訪問看護ステーションの看護師とはSNSを活用し、情報共有している。
 患者や介護関連事業所が近隣地区にまたがる場合があり、他地区との連携を図る必要がある。

平成25年度城東区医師会在宅医療円滑化ネットワーク事業
城東区医師会 池尻真康氏

 退院時に主治医が決まらない場合に備えて、城東区医師会で主治医紹介システムを運用しており、対象病院を区内から周辺の基幹病院へ拡大させた。医師会が在宅医療に参入することで、会員間の意識も向上し、医療機関の参画が増加したほか、強化型在宅支援診療所を中心に、在宅での看取り件数も増えた。
 行政との共同による区民向け講習会開催時に、医療資源を記したマップを配布。特に地域包括支援センターの担当エリアを色分けして周知を行った。
 地域の多職種が参加して、医療と介護の連携に関する研修会・講習会を通じ、地域全体の質的・量的向上が図られたほか、医療と看護、医科・歯科の専門的な連携研修も実施している。

基幹型訪問看護ステーションを拠点とした在宅医療ネットワーク事業
大阪府看護協会

 大阪府看護協会(訪問看護事業部)では、天王寺区内において在宅医療円滑化ネットワークの協議組織を運営し、多機能連携ネットワークを構築するための研修会を実施した。また、同区内訪問看護ステーション9カ所の受け入れ可能状況を把握するとともに、天王寺区内6病院(基幹的な病院を含む)や地域包括支援センターなどへのFAXによる情報提供に努め、転退院の連絡調整が円滑となり在宅医療への移行が進んだ。これらが地域の基幹型訪問看護ステーションの役割として機能発揮されることを期待する。