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時の話題

高齢者の終末期ケア

府医ニュース

2026年9月30日 第3157号

QOLからQODへ

 QOL(Quality Of Life)の概念は、1946年WHO憲章の健康の定義から始まり、48年にカルノフスキーが、Karnofsky Performance Status(KPS)を開発。70年代以降米国でQOLという言葉が広がった。「生活の質」と訳され、患者の「尊厳を保ち、その人らしい満足のいく生活の実現」を目的とした治療・援助を目指す。ACP(Advance Care Planning)は人生会議とも呼ばれ、利用者が比較的元気な時に、家族や医療従事者とQOLについて話し合う。
 QOD(あるいはQODD:Quality Of Death/Dying)の概念は、80年代頃から欧米で広がった。「死の質」と訳され、一時点の死を表す「Death」から死にゆく過程や遺族のケアを含む「Dying」がある。終末期になり「いかに自分らしく尊厳を保って逝くか」ということでQOLからQODへと移り、患者・家族・医療関係者の間で話し合う。
 イギリスの経済誌『エコノミスト』の調査機関が、世界の国別QODの評価を行った。調査は「緩和ケアとその保健医療状況」「保健医療分野の人材」「経済的負担」「ケアの質」「地域社会との関わり」の5領域について世界80カ国を対象として行われた。2015年の調査では、日本は14位。高評価国は、1位イギリス、2位オーストラリア、3位ニュージーランド。低評価国は78位フィリピン、79位バングラデシュ、80位イラク。イギリスは利用者が数時間から数日後に亡くなることが予期される場合の看取りや医療行為のクリニカル・パス(「リバプール・ケア・パスウェイ」)が当時評価された。これは、医療の質・効率を確保してケアチームがスムーズに連携するために、ケア処置や検査項目などをまとめたツールで、痛み、呼吸困難などの終末期症状の緩和、安全で適切な服薬や口腔ケア、水分補給などのサポート、家族などへのサポート、死亡後の対応などがきめ細かくチェックリスト化されている。高評価国の特徴は、①保健医療サービスに公的支出の高さ②医療従事者に対する専門的緩和ケアトレーニング③利用者の財政的負担の軽減④オピオイド(モルヒネ系)鎮痛剤の幅広い使用⑤終末期や緩和ケアに対する国民の意識の高さ――など。日本の終末期医療は地域コミュニティーとの関わりという点では高評価であるが、麻薬鎮痛剤の使用は得点が低い結果となった。日本は世界トップクラスの長寿国であるが、必ずしも長寿=幸福ではないと、大半の国民は理解している。特定非営利活動法人「老いの工学研究所」の調査(20年)によると、「さらなる寿命延伸を願う」のは24%にとどまり、尊厳死の法制化を望む人は74%であった。終末期にあたり、「1日でも長生きしたい、延命治療に頼りたい」と思う一方、「無駄な医療費、わがまま、家族の身体的・経済的負担、社会のお荷物」など批判的な考えが浮かぶ。これは優生思想とも関連する。日本社会では同調圧力が働きやすい。死をタブーとしないで国民的な議論が必要である。「どのような状況であっても生きたいと思う本人の意思が尊重される」という世の中になってはじめて安楽死や尊厳死の積極的な議論ができると思う。