
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
府医ニュース
2026年8月5日 第3152号
◆熊本で大地震が発生した。救命救助に加え医療支援体制が直ちに動き始める。災害のたびに痛感するのは、医療は平時だけでなく、有事にも社会を支える土台だという事実である。
◆経済学者・宇沢弘文は、医療を教育や司法と並ぶ「社会的共通資本」と位置付けた。市場にも国家にも委ねきれず、社会全体で支える基盤だと考えたのである。その根幹に据えたのは、専門家の職業倫理による自律であった。
◆近年、自己負担増や給付抑制が進み、医療は「個人の選択と責任」として語られる場面が増えた。医療保険制度は、そうしたリスクを社会全体で支える相互扶助の仕組みである。
◆災害時には、効率や採算は意味を失う。必要なのは、地域医療、行政、住民が築いてきた信頼と連携である。社会的共通資本とは、平時に維持し、有事に真価を発揮する備えなのだ。
◆医療を市場原理だけで語れば、平時の効率は高まるかもしれない。しかし、社会が危機に直面した時、その脆さは隠せない。災害は社会的共通資本としての医療を改めて問うている。(今)