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医師・医療関係者のみなさまへ

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時事
府医ニュース
2026年7月29日 第3151号
高額療養費制度の見直しが8月から始まる。政府は医療保険制度の持続可能性を理由に制度改正を進める。しかし、その本質は自己負担額の見直しにとどまらない。医療をどこまで社会で支え、どこからを個人の責任とするのかという、社会保障のあり方そのものが問われている。
日本の医療保険には、高額療養費制度に加え、一部の健康保険組合が独自に設ける「付加給付」が存在する。大企業の健康保険組合では、最終的な自己負担が数万円程度に抑えられる例も少なくない。
一方、国民健康保険や後期高齢者医療制度にはこうした仕組みはない。このため、自己負担の上限が引き上げられても、付加給付のある加入者は影響が限定的で済むが、付加給付のない加入者は、増えた負担を直接引き受けることになる。
制度改正の影響は、最も支援を必要とする人々に集中する。また、社会保障は、本来、弱い立場にある人ほど厚く支える制度である。その理念に照らせば、ここには見過ごせない逆転現象が生じている。
一方で、公的保障の縮小は新たな市場を生み出す。自己負担が増えれば、人々は将来の医療費に備える。その不安を受け止めるのは民間医療保険であり、公的保障が後退するほど民間市場は拡大する。
市場が拡大すること自体を否定するものではない。しかし、本来は社会保障が担ってきたリスクまで市場原理に委ねられる時、医療は「権利」から「購買力」に左右されるサービスへと性格を変え始める。
これは医療に限らない。年金では私的年金、介護では民間サービス、教育では学習産業と、公的制度の縮小は新たな市場を形成してきた。社会保障は、公的に保障される仕組みから、市場で購入するサービスへと少しずつ姿を変えていく。この流れは「社会保障の市場化」と呼ぶべき現象である。
もちろん、医療費の増大や財政の持続可能性は避けて通れない課題である。しかし、財政改革とは単なる給付削減ではない。社会保障と市場の境界線をどこに引くのか。それは、私達がどのような社会を選ぶのかという問題でもある。
問われているのは医療費ではない。病気という人生のリスクを誰が支えるのか──国家か、市場か、それとも個人か。その選択が、日本の社会保障の将来を左右する。(今)