TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

拡大鏡

府医ニュース

2026年7月29日 第3151号

 ◆英国の哲学者カール・ポパーは寛容のパラドックスを唱えた。「もし社会が無制限に寛容であるならば、その寛容性は最終的に不寛容な人々によって利用され、社会の基盤である寛容そのものが破壊されてしまう」と述べている。
 ◆医療現場でのカスタマーハラスメントが深刻化している。事態は病院、クリニックから救急隊員、訪問看護の現場まで、暴言、脅迫に留まらず傷害や殺人事件にも及ぶ。不寛容の極みである。倫理的に救急や重症例での責務は果たすとして、一般診療では応招義務順守の寛容性の限度を超えている。患者に寄り添う理念の接遇対策など無益である。
 ◆労働施策総合推進法が改正され医療機関でもカスタマーハラスメント対策が義務化される。しかしそれは、雇用管理上の職員の心身の健康・安全を守る職場環境を整備するものである。
 ◆このまま不寛容の患者が放置されれば医療の寛容は破壊される。応招義務が無制限の寛容ではない社会的理解と、医の倫理が歪まず健全な医療が守られる法整備が求められる。(誠)