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時の話題
府医ニュース
2026年5月6日 第3143号
上野賢一郎・厚生労働大臣は令和8年3月23日、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の発症を防ぐために事前投与する「予防投与」を、経口治療薬「ゾコーバ」の効能・効果に追加承認した。原則として感染者と同居し、重症化リスクのある人が対象となる。
「ゾコーバ」についてのグローバルP3相曝露後発症予防試験の詳細な結果が、第32回CROI2025で公表された。同試験は、米国、南米、アフリカ、および日本を含むアジアで実施。対象は新型コロナ陰性が確認された12歳以上の被験者2041例を半数ずつゾコーバ投与群とプラセボ群に分け、5日間にわたり1日1回治験薬を投与した。各群の10日後と28日後の感染症状の有無(主要評価項目の5症状:鼻水・喉の痛み・咳・発熱・倦怠感)と副次評価項目(抗ウイルス効果:ウイルスRNA変化量)を比較検討。10日後での新型コロナ発症はゾコーバ群2.9%に対しプラセボ群9.0%で、統計学的有意差を持って発症リスクを67%低下させた。この傾向は28日後まで続き、ゾコーバ群5.8%、プラセボ群12.2%であった。副次評価項目は2387例を対象とし、10日後では、発症した割合はゾコーバ群4.4%に対しプラセボ群10.2%で、主要評価項目の解析集団と同様の結果であった。
新型コロナの日本での発症は、2年1月15日、神奈川県で第1例を確認後、急速にパンデミックになり、特に初期のアルファ株やデルタ株では致死率が高く、大きな脅威となった。その後ウイルス自体の遺伝子変化もあるが、ワクチンの開発、治療薬の開発にも助けられ当初よりは軽症化し、5年5月8日から感染症分類の5類となった。新型コロナの治療薬のゾコーバは4年11月に緊急承認、6年3月に通常承認となった。ゾコーバは高薬価(1錠7090円)で5日間の内服で、3割負担でも1万5千円程度となる。予防投与の実費なら、薬剤代だけで約5万円となる。インフルエンザの予防投与は、例えばタミフル1日1回1カプセルを7~10日間服用するが、1カプセルが107~111円なので、実費の予防投与でも薬剤費だけなら数千円と比較的安い。また、ゾコーバは併用禁忌薬が多いことに注意を要する。CYP3A(体内で薬剤を代謝分解する酵素)に対する阻害作用があり、そのために多くの併用禁忌薬剤がある。
最近では、新型コロナはあまり大きな話題にならず、人々の意識にも上ることは少ないが、年に夏と冬の2回、小さな流行の波がある。夏は沖縄から、冬は北海道から流行の波が来る。季節が早く進み、窓を閉め空調を行うなど換気が妨げられることが原因と考えられる。医学研究所北野病院の丸毛聡医師によれば、定点報告は減ってはいるが、下水中のウイルスは依然として高い状態が続いているとして、「隠れコロナ患者」が多いことを指摘している。6年度のデータを見ると、新型コロナでの死亡者数は3万5865人で、インフルエンザ2855人の約12.5倍に上る。決してインフルエンザ並みに軽症化したわけではない。