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抜け駆けするな――同調圧力の内面化

府医ニュース

2026年4月15日 第3141号

 中東戦争下、イランが日本のタンカーにホルムズ海峡通過を認める可能性に触れ、「他国はどう思うか」という視点から「(日本は)抜け駆けするな」とするマスコミ論調を目にした。有識者とされる筆者の発想に、強い違和感を覚えた。
 外交とは本来、自国の安全と利益、理念を基軸に構築されるべきものであり、他国の反応はあくまで考慮要素に過ぎない。にもかかわらず、「どう見られるか」を出発点とする思考は、主体性の放棄に等しい。
 しかし問題は、これが一コラムの特異な見解にとどまらない点にある。我が国の言論空間には、「おかみに配慮してものを言う(言わない)」空気が広く浸透している。批判は言い換えられ、異論は角を削られ、波風を立てないことが暗黙の規範となる。
 その象徴が「提案型野党」であろう。本来、権力を監視し対峙する野党が、あらかじめ受け入れ可能な提案へと自らを調整する。この姿勢は一見建設的に見えるが、対抗軸を自ら制約する点で、野党の自己否定に近い。結果として、権力との緊張関係は希薄化する。
 「抜け駆けするな」の背後には、逸脱への忌避と同調圧力がある。外部の評価を基準とする思考は、やがて自律的判断を空洞化させる。それは協調ではなく、見えにくい隷従の構造である。
 主体をどこに置くのか。その問いを曖昧にしたままでは、「従うこと」は静かに常態化していく。言論に求められるのは、その逆であるはずだ。この構造は、決して遠い話ではない。(真)