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時事

麻疹の報告数が増加

府医ニュース

2026年4月15日 第3141号

日常診療における対策の徹底を

 麻疹は、国内で長く低水準に抑えられてきた一方、近年は報告数の増加がみられ、医療現場で改めて注意を要する感染症となっている。厚生労働省は令和8年3月12日に注意喚起を行い、特設ページでは「麻しんを疑った際の対応」も示している。大阪府内でも患者発生が続いており、医療機関には初期対応の再点検が求められる。
 国内の報告数をみると、感染症発生動向調査では4年6例、5年28例、6年45例、7年265例と増加し、8年も3月25日時点で152例が報告されている。大阪府内でも5年5例、6年11例、7年21例と推移し、8年第13週時点の累積報告数は12例である。もはや散発例としてのみ捉えることはできず、日常診療の中で改めて想起すべき感染症となっている。
 麻疹の特徴は、その感染力の強さにある。基本再生産数(R0)は一般に12~18とされ、季節性インフルエンザの1.3前後、新型コロナウイルス感染症の初期株で2~3前後を大きく上回る。外来では待合や受付、採血室、画像検査室などの通常診療そのものが曝露機会となり得る。発熱・発疹患者を前にした時点で、常に麻疹を鑑別疾患として念頭に置く必要がある。
 臨床的には、潜伏期は通常10~12日程度で、その後にカタル期として38℃前後の発熱、咳、鼻汁、くしゃみ、結膜充血、眼脂、羞明などが2~4日続く。熱がいったん下がる頃に頬粘膜にコプリック斑がみられ、その後、再度39~40℃台へ上昇するとともに、発疹が耳後部、頸部、顔面から体幹、四肢へと拡大するのが典型的な経過である。
 一方、免疫を有していても不十分な場合には、軽症で非典型的な経過をとる修飾麻疹がみられる。修飾麻疹では典型所見に乏しく、高熱を伴わない、発熱期間が短い、コプリック斑を認めない、発疹が急速に出現するが融合しにくいなどの所見がある。このため、発熱、発疹、カタル症状の組み合わせをみた時点で麻疹を鑑別に置く姿勢が重要となる。
 問診では、海外渡航歴、接触歴、予防接種歴、既往歴の確認が基本となる。厚労省は、発熱や発疹を呈する患者を診察した際には、麻疹の可能性を念頭に置き、渡航歴、罹患歴、予防接種歴を確認するよう求めている。大阪府も同様に、麻疹の発生を意識した診療を行うよう医療機関に要請している。
 麻疹を疑った場合には、臨床診断の段階で最寄りの保健所へ直ちに届け出を行い、原則として全例でウイルス遺伝子検査が求められる。検査は血清IgM抗体、ペア血清でのIgG抗体の陽転または有意上昇、さらに咽頭ぬぐい液、EDTA血、尿を用いたPCR等による病原体検出が基本である。検体は発疹出現後1週間以内を目安に、できるだけ早期に採取することが望ましい。
 最も有効な予防策は麻疹含有ワクチンの接種である。医療機関の平時対応としては、すべての職員の麻疹罹患歴と麻疹含有ワクチン接種歴を記録に基づいて把握することが必要である。記録に基づく2回接種歴、または検査診断された罹患歴が確認できる場合は追加対応を要しないが、記録が確認できない場合には抗体価測定かワクチン接種を検討する。
 また、大阪府は、疑い例を含めた個室管理など、麻疹の感染力を踏まえた院内感染対策を求めている。受付段階での電話連絡、来院時間の調整、一般待合との分離、動線の最小化、診察後の速やかな退室までを一連の手順として院内共有しておくことが肝要である。大阪で患者発生が続く今、疑う、隔離する、届け出る、検体を取るという標準的初動の徹底が求められる。(隆)