
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

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府医ニュース
2026年4月15日 第3141号
日本は、国民皆保険制度の下、これまで充実した医療制度により、長寿社会と健康寿命を延伸してきた。一方、高齢者の医療需要の増加や生産年齢人口の減少により、医療従事者の確保が困難になる中、質の高い医療の提供には、医療機関の経営安定は不可欠である。
令和8年度に診療報酬が改定され、診療報酬(本体)は3.09%引き上げられるが、物価・人件費の高騰により、経営環境は厳しい状況にあり、経営状況が悪化した場合は、迅速な支援策が必要である。
医療法改正により、外来医師過多区域における開業制限が検討されているが、高齢者数も多く医療需要が高いことから、診療報酬上の過度な減算、過剰規制にならないよう慎重な議論が求められる。オンライン診療については、医療法が改正され法的に位置付けられたものの、地域を越えた診療に対する制限、「オンライン診療受診施設」の責任の所在や事後対応(診療対応医療機関の確保、費用負担等)、連携医療機関の明記・公表に関する要件など十分とは言えない。運営に関する明確な規定や適切な運用例を示した上で、営利性や利便性を優先した運用は制限する必要がある。また、マイナ保険証や医師の働き方改革への対応など、医療現場の混乱や地域医療への影響が生じないよう注視していく。
かかりつけ医機能報告制度は、地域医療を面で支える体制構築のため、幅広い医療機関の参画が求められる。かかりつけ医機能の有無により、フリーアクセスの阻害や登録制への移行につながらないよう取り組むことが重要である。
医薬品については、現在も供給不足が続いており、解消に向けた対策が必要である。日本は医薬品原料の多くを輸入に依存していることから、国内の製造体制を整備しなければ安定供給の確保は困難である。また、長期収載品の選定療養やOTC類似薬の自己負担の見直しが検討されているが、医療上必要とする患者に対する配慮とともに、保険給付の選定療養化の安易な拡大や患者負担増加には歯止めをかけなければならない。
8年度から、子ども・子育て支援金の医療保険料への上乗せや、高額療養費制度の見直しが実施される。国民への十分な周知と、長期療養者への配慮が必要である。
少子・超高齢社会を乗り切るには、子どもを育てる環境を整備し、必要な医療を受けられる体制を維持し、国民が安心して暮らせる社会を構築することが肝要である。その根幹は社会保障であり、国の責務として財政支援を行い、国民が求める持続可能な社会保障を構築しなければならない。その実現のため、日本医師会に医療施策の提言を行い連携を図りながら、国民とともに積極的に国への働きかけを強化する。
現在、各圏域において、「在宅医療において必要な連携を担う拠点(連携の拠点)」を中心とした在宅医療提供体制の構築が進んでいる。「新たな地域医療構想」の推進においても、高齢者救急への対応や同体制の構築が重要となることから、引き続き、連携の拠点となっている郡市区医師会や行政機関、「在宅医療において積極的役割を担う医療機関(積極的医療機関)」、訪問看護事業所、介護サービス事業所等との連携や体制構築に向けた支援に取り組む。
認知症対策においては、「大阪府認知症施策推進計画2024」の下に、認知症本人とその家族が安心して暮らせる社会の実現に向け、保健医療・福祉体制の整備などを進めていく。また、6年4月より、障がい者に対する民間事業者による合理的配慮の提供が法的義務となった。すべての人が、ともに尊重しながら生活を送ることができる社会の実現を目指し、障がい者差別解消への理解促進に向けた周知・啓発を図る。さらに増加する若年世代の自殺者をはじめ、各世代別の背景を踏まえた分析・対策を進め、医療側の立場から、自殺防止や未遂者支援が進むよう働きかけていく。
5年度に大阪府内の救急告示医療機関認定基準が改正後、7年度申請分から新基準が適用され、8年1月時点で281施設となった。初期・二次・三次救急医療体制がより効率的に機能し、さらなる地域体制の向上を目指すにあたり、府内の救急搬送・病院受入調整の洗練を図り、持てる救急医療資源を最適利用する必要がある。救急搬送支援・情報収集・集計分析システム(ORION)データを利用した医療統計等解析などに積極的に関与し、その結果に基づいた医療機関などの相互連携と情報共有化を図り、効率的な救急医療体制の整備に努める。救急救命士業務の場の範囲拡大などに伴う特定行為等の質の担保とあわせ、メディカルコントロール体制の一層の強化充実を目指す。また、小児科、精神科、眼科、耳鼻咽喉科などの特定科目における救急医療体制の充実に引き続き貢献していく。
近年、各地で異常気象による自然災害に見舞われ、防災・減災体制の強化が求められる。有事の対策・体制の整備に向け、保健医療福祉調整本部における災害医療コーディネート機能の点検や、日医と連動したJMAT研修や派遣体制などの充実を図る。あわせて、DMATをはじめ各関係機関とも緊密な連携を進める。地域医療においては、発災後も医療提供の継続が求められるため、各医療機関におけるBCP策定の推進が必須となる。地域全体の災害への対応力を高めるためには、郡市区医師会と訪問看護および介護・障がい福祉事業所、行政・関係団体等による「連携型BCP・地域BCP」の策定も不可欠であり、その策定支援に努める。
少産・少子の傾向が一段と進んでいる一方、思いがけない妊娠や望まない妊娠に係る出産は虐待につながりやすい。大阪府が行う「にんしんSOS」など妊娠に悩む方のサポート体制の拡充を求めるとともに、健康でたくましく生き抜く子ども達を育て、精神的なサポートを含め、女性が安心して妊娠・出産・育児ができるよう、妊娠期から子育て期にわたる医療・保健・福祉の切れ目のない支援のために一層尽力する。
二次・三次周産期医療の現場は、医師不足や過重労働などにより疲弊し、混乱を来している。未受診妊婦を出さないための妊婦健診の拡充をはじめ、すべての妊婦・新生児が安心・安全な医療を受けられる体制整備を図るため、産婦人科救急搬送体制確保事業を維持するとともに、NMCS(新生児診療相互援助システム)ならびにOGCS(産婦人科診療相互援助システム)における緊急時、ハイリスク分娩などに備えた取り組みを支援していく。また、大阪府では6年度より、小児中核病院、小児地域医療センターを拠点とした圏域ごとの小児救急医療体制の構築や充実を目指す小児医療連携体制・受入体制構築事業が開始され、引き続き動向を注視する。
医師不足と偏在による地域医療への影響が懸念される状況にあって、増加する女性医師の就業環境の整備および改善に対する取り組みが不可避の事態となっている。本会では、平成22年度から「大阪府医師会女性医師支援プロジェクト」に基づき、育児支援体制の整備・充実を図っている。さらに、日医ドクターバンク事業と業務提携し、男女問わず医師の就業・復職支援などの事業拡充を推進していく。あわせて医療従事者等の紹介に向けた事業も検討を進める。
27年から導入された「医療事故調査制度」により、対象事案が発生した場合、医療機関は施設の規模に関わらず、院内事故調査に取り組むことが義務付けられている。本会は「医療事故調査等支援団体」として、会員からの相談対応、外部委員の派遣、解剖・AI実施機関の紹介など、各種支援活動に引き続き取り組む。
「医療事故調査制度」の導入を契機に、医療安全対策の重要性が再認識されるようになったが、毎年、本会は「医療安全推進指導者講習会」を開催し、各医療機関における先導者の育成に取り組んでいる。今後も内容の充実を期し、より一層の安全対策の推進に取り組む。
通信技術等の著しい発展によって、医療分野のICT化は新たな局面を迎えており、医療機関には一層のICT化が求められる。日医や自治体を通じて手厚い支援策が講じられるよう働きかけるとともに、ICTを導入できない医療機関へのサポートにも注力する。
令和8年度の診療報酬改定の基本方針においては、医療現場におけるAIやICTの活用が、個人の健康増進や医療の質の向上の実現につながるとして、医療DXのより一層の推進が重要とされた。一方で、AIの進展やオンライン診療等の状況を鑑みると、医療現場への円滑な適用も検討する必要がある。医師と患者の信頼関係を構築する視点も含めて会員への周知・啓発を続けたい。
医療のデジタル化への移行が進む一方、セキュリティーに関する課題は深刻さを増している。医療機関を対象としたサイバー攻撃は患者の生命に関わる甚大な被害となる恐れがあり、万全な対策が望まれる。同時に、関係者の情報セキュリティーに関するリテラシー向上も求められており、日医や警察庁との連携の下、啓発や情報提供に努めていく。
1.国民皆保険制度の堅持と国民のための医療制度改革の推進
2.地域保健医療体制の充実
3.母子保健(少子化問題を含む)対策の推進
4.健康づくり事業の推進
5.感染症対策の推進
6.高齢者・障がい者等対策の推進
7.新医師臨床研修制度への協力体制の整備推進
8.救急・災害医療対策の推進
9.情報システムの整備・推進
10.学術研修活動の推進
11.勤務医活動の推進
12.女性医師の就業環境の改善ならびにキャリアアップ支援の推進
13.医療における安全性の確保と医療に対する国民の信頼の回復
14.診療情報の保護および提供の推進
15.広報活動の充実
16.産業医の養成、産業医の資質の向上、地域産業保健事業への対応強化
17.安定した医業経営の推進のために
18.学校保健活動の活性化
19.訪日外国人旅行者医療対策
20.人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)の普及啓発に向けて
(具体的事項は略)